Departmental Bulletin Paper 神戸における獅子舞 : 神戸華僑総会舞獅隊における伝承を中心に

凉松, 育子

29pp.65 - 81 , 2017-03-31 , 国立音楽大学大学院
ISSN:02894807
Description
本稿の目的は、神戸の中国獅子舞(以下、獅子舞)の団体の一つである神戸華僑総会舞獅隊(以下、舞獅隊)を取り上げて、舞獅隊における獅子舞の伝承や音楽の特徴を明らかにし、舞獅隊や神戸華僑における獅子舞の伝承の在り方を考察することにある。神戸の獅子舞団体には、今回対象とした舞獅隊と神戸市立神港橘高等学校龍獅團の2 つがある。前者は、メンバーの9 割以上が華僑で構成されており、華僑を中心とした伝承がなされているが、後者では日本人の高校生が部活として獅子舞や龍舞を行っている。神戸における獅子舞伝承では団体によって担い手が異なるということが特徴の一つであり、今回は舞獅隊の華僑を中心とした伝承が行われているという面にも着目した。本稿は、「1. 神戸華僑総会舞獅隊の概要」、「2. 踊りと演技構成」、「3. 楽器と音楽の特徴」、「4. まとめと今後の課題」の4 つにわかれている。「1. 神戸華僑総会舞獅隊の概要」では、戦後の神戸華僑による獅子舞伝承から舞獅隊の継続した伝承が始まるまでの流れを概観し、現在の舞獅隊の活動状況について述べた。神戸華僑における獅子舞伝承という観点から、同会の幼獅班や神戸唯一の華僑学校である神戸中華同文学校舞獅隊についても触れた。「2. 踊りと演技構成」では、華僑総会の舞獅隊と幼獅班の南京町(神戸の中華街)における演技の流れについて述べた。舞獅隊と幼獅班では踊りまたは音楽の基本的な型は同じものを使用しているものの、幼獅班の方がより簡単な動きを行っていることがわかった。「3. 楽器と音楽の特徴」では、舞獅隊で実際に使用している楽器(太鼓、銅鑼、シンバル)について説明し、舞獅隊の踊りまた音楽の基本となる3 つの型の音楽と、演技の中で獅子の動きを強調している役割をもった音楽の分析を行った。舞獅隊では太鼓が音楽の中心となり、全ての楽器を統率していること、太鼓がリズムや音色を変化させることによって音楽に表情をつけていることを明らかにした。また、幼獅班における基本となる3 つの型の音楽も調査した。幼獅班では舞獅隊と同じ型を使用しているものの、舞獅隊のリズムの要素を用いながら、より簡単な音楽を演奏していることがわかった。「4. まとめと今後の課題」では、これまでの総括として舞獅隊また神戸華僑における獅子舞の伝承の在り方を考察した。舞獅隊では、華僑を主体として幼少期からの体系化された伝承が行われていた。舞獅隊のメンバーは長崎の獅子舞団体にも指導しているが、音楽は舞獅隊とは異なるものを指導しており、音楽は舞獅隊にとって自分たちの個性を示すものであるといえる。加えて、神戸の獅子舞伝承においては、その担い手によって華僑による伝承と日本人による伝承の 2 つにわかれているという点から、舞獅隊における獅子舞は、「神戸における華僑による中国文化」また「神戸華僑の文化」としての意味合いを多くもって伝承がなされてきたと考察した。

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