Departmental Bulletin Paper 明治・大正期の雑誌(音楽誌を除く)における西洋クラシック音楽の作曲家に関する伝記情報(その2) : 記事目録と分析

松村, 洋一郎

29pp.33 - 49 , 2017-03-31 , 国立音楽大学大学院
ISSN:02894807
Description
本稿は、明治・大正期の音楽誌以外の雑誌に掲載された、西洋芸術音楽の作曲家の伝記情報を扱った記事情報をまとめ、その分析を行うものである。筆者は、この調査の一部を本学の『研究紀要』第50集(2016)に発表しており、本稿はその続編となる。網羅的なデータベースが研究の基礎となることは言うまでもないが、明治・大正期を対象とし、複数のメディアを横断的に調査した作曲家に関する文献目録はない。本稿では以上のような問題意識に立ち、具体的には、各種の総目次・目次集、データベースによって記事情報を収集し、その後に現物を確認するという方法で作成した記事目録を掲載した。そして、記事情報に対して定量的な分析を行ったうえで、記事内容の傾向についても考察を加えた。まず、どの作曲家に関する記事がどのくらい書かれたか、について示した。57名の被伝者(伝記記事の対象者)に関して398点の記事が書かれていたが、上位3名、ヴァーグナー(96点)、ベートーヴェン(72点)、モーツァルト(31点)に関するものだけで、実に全体の約半数を占めていた。部分的ではあるが、音楽誌のデータと比較を行い、有力作曲家による「寡占」は、音楽誌よりも一般誌においてより強く現れるのではないか、と推測した。続いて、10年ごとに年代を区切り、変遷やそれぞれの時期の特徴を捉えた。全体としては、時代を下るに従って記事数、被伝者数ともに増加が見られた。3人の有名作曲家による「寡占」状態であるが、これは年代によって差が有り、1901(明治34)-1910(同43)年が最も顕著であり、その後は3者の記事が占める割合が低下していく。全体として情報の多彩さが増していったと言えるだろう。また記事数が多かったヴァーグナー、ベートーヴェン、モーツァルトの3者は、書かれた記事の傾向がそれぞれに異なった様相を示していた。ヴァーグナーに関する記事では、主題が多岐にわたっていることが確認できた。それらのなかで、もっとも数が多いのが舞台作品の台本の翻訳、あらすじ、文学面からの作品論であり、ほかの2者に比べて、その人物が生み出した作品に向けた関心が現れていると言える。これに対して、作品ではなく人物に対しての興味を強く感じさせるのがベートーヴェン関連の記事であった。肖像画の掲載例が多いのもその表れであろうし、また、「月光の曲」に関する記事が多いのも同じであろう。これは「月光ソナタ」の聴取体験に基づくものではなく、主には英語教科書の『ニューナショナル読本 第5巻New National Fifth Reader』によって広く読まれた「月光の曲」の作曲時のエピソードを扱ったものだからである。そして、この両者の中間と言えるのがモーツァルトであった。筆者は、音楽誌に関する調査を継続して行っており、続いては、本稿で扱った一般誌との比較を行い、それぞれの特徴を明らかにしたいと考えている。

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