紀要論文 日本の農業金融の抱える諸問題についての一考察 : 農林中央金庫の現況
A Consideration of Problems in Financial System of Japanese Agriculture Sector

天尾, 久夫

(6)  , pp.283 - 306 , 2016-03-15 , 作新学院大学 作新学院大学女子短期大学部
ISSN:2185-7415
NII書誌ID(NCID):AA12530583
内容記述
[要約] 本稿の目的は、郵政と比しても十分巨大で、最後の官主導の金融機関「農林中央金庫」の姿を詳細に明示することにある。この機関は監督官庁が農林水産省と金融庁の二つであるが、その信用業務について詳細に記した論文は少ない。東日本大震災で農・漁・林業の復興のための資金供給、あるいはTPP 1)による、米を除く農産物関税の実質上の撤廃など、農林水産業の取り巻く環境は大きな変化の途上にある。単に競争力強化と言っても技術の進歩、生産性の向上、効率性を高めるには、資金面の裏付けが必要となる。そういった役割のために「農林中央金庫」は作られているはずであるが、それを担う力を有しているのか、それが本稿執筆の契機となっている。 結論から述べれば、この機関はJAグループ 2)の信用事業・共済事業の資金面でのつながりも深く、一蓮托生の関係である。金融機関として見た場合、その保有する資金量からみて、貸出部面から見たとき、機関の設立趣旨とはかなりかけ離れていることが分かる。更に、豊富な資金を金融資産に振り向けているのであるが、その収益率も貸出利率と預金利息支払いの差の収益と比してそれほど高くないことも確認できる。本稿の結論として、1985年に金融の国際化が始まり、メガバンクの改革が終わり、地方銀行でも再編が進む中、この機関は組織再編も含めた抜本的な改革が待った無しの事態であることが再認識されるであろう。 金融機関の行員から見て、この機関を見たとき、金融の理想像である「資金調達し、進取の気性に富む企業家に貸し出しているのか」という問いにはいささか疑問が残る。そして、同時に、この機関は経済成長の揺籃としての責務を果たすという公器の役割を果たしていないと感じるかもしれない。言い換えれば、この組織は、長期に亘り、全国の農協組織から潤沢な資金を調達でき、資金運用で利益を獲得することが本来の目的であった。本稿ではそれらが制度上、業務上徹底され「旧態依然」としたまま今日まで残ったことを示すだけかもしれない 3)。1) TPPはTrans-Pacific Strategic Economic Partnership AgreementまたはTrans-Pacific Partnership:環太平洋戦略的経済連携協定)と言う。2) ディスクロージャー誌では、JAグループは、農業協同組合(JA)、漁業協同組合(JM)、林業組合(JF)をまとめて述べた総称として、金融・共済事業ではJAバンクとJFマリンバンクというような形で表記している。3) 金融業界に勤める者の中には、農林中央金庫を金融機関として意識する人は非常に希有であろうという話を伺った。この発言にはJAグループの金融の役割、政府の保護体質が農業分野の金融面でも現れていることへの「無言」の批判を示しているのかもしれない。本稿では改革の是非についての価値観を含む意見は排するよう意識して描くよう努めている。
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