Departmental Bulletin Paper 国家の機能と生活陶冶 : ペスタロッチーの教育思想を中心として

大沢, 裕

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本論文の目的は,J.H. ペスタロッチーの教育思想を中心として,国家の機能と生活陶冶との関係に目を向け,生活陶冶の視点から,国家の立つ位置を考察することである.彼は国家の特定の統治形態に固執していたわけではなく,その時々の政府に樣々な教育的助言を行なった.国家の役割は,法と正義とによって,国民の権利を守ることである.国家は権力行使によって法秩序を維持していく.しかし現実には国家が集団利己主義に陥る可能性が極めて高いということを彼は認識しつつ,家庭という共同体の原理をもって,国家社会のあり方を捉えようとした.国家の中に住まう人間たちが国民であるのに対して,同じ文化的背景をもち,共同意識をもって社会を営む人間たちは民族である.ペスタロッチーは各国固有の国民性を認めていたが,それは時代とともに変化するものであった.国民性は,人間が生活圏を広げて最後に獲得されるものではなく,むしろ最初は家庭を通じて育まれることを彼は認識していた.彼は国民性の美風を保つためには,単に習慣・慣習・伝統に依存するだけでなく,意図的教育がどうしても不可避なものと考えた.彼は生涯を通じて少しずつ学校の価値を認識していった.生活は確かに陶冶する.しかしまずは家庭,次に学校,職場での生活を通じて人間は陶冶されるのであって,国家は国民を直接陶冶するのではない.国家は家庭,学校,職場を支援することを通じて,間接的に人間の陶冶を実現するのである.
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