紀要論文 福島原発事故を題材にした少女マンガに見る女性と地域社会-マンガ「デイジー~3.11女子高生たちの選択~」を事例に-

矢内, 真理子  ,  Mariko, Yanai

内容記述
「デイジー~3.11女子高生たちの選択~」(漫画:ももち麗子、原作:小林照弘、草薙だらい、信田朋嗣)は講談社の少女マンガ誌『デザート』に連載された作品である。本作品は原発事故後の福島の高校に通う4人の高校3年生の卒業までの1年を描いている。「デイジー」が他の原発事故を題材にした作品と異なり評価できる点は2点ある。第1に本作品は架空の人物が登場するフィクションだが、作者が福島の学生などに取材した内容に基づいて構成していること、第2に少女の日常生活に及ぶ事故の影響を、少女マンガの最大の特徴である登場人物の細やかな心の動きを用いて描いていることであり、それゆえ本稿では本作品を分析の対象とした。困難な局面において主人公たちが進路決定、職業選択を行う経緯を、地域社会をどう意識しているか、事故前と比べて地域社会との結びつきが強化されているかという視点から分析した。その結果、いずれの登場人物も「福島のために」貢献したいという動機を持って進路選択をしていること、事故前と比べて明らかに地域への意識が高まっていることが明らかになった。登場人物たちは一見、自らの意思で職業選択を行い、メディアで表象されてきた旧来のジェンダー像とは異なった主体的な生き方が描かれているようにも見える。一方で、モラトリアムの時期を持たずに地域のための働き手として、大人としての役割を期待されているとも捉えることができる。家庭とは、子どもにとっていつでも見守られていて、外の世界で危険があれば帰ることができる「安全基地」であるという。それは家庭だけでなく、地域と人間においても同様のことが言えるのではないか。原発事故によって「安全基地」の揺らいでいる状況が、少女の地域社会への結びつきを精神的にも、肉体的な身の置き所としてもより強めていると指摘できる。
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