Research Paper 近代日本におけるラッパ受容に関する基礎的研究

奥中, 康人

2019
Description
静岡文化芸術大学
美学・芸術諸学
近代日本におけるラッパの受容を(とりわけこれまで顧みられることのなかった消防の側面から)明らかにするため、平成28年度は、群馬県内の消防組に研究対象を限定し、群馬県立図書館、前橋市立図書館、国立国会図書館等に所蔵されている群馬県内の「史誌」(約80タイトル)、および群馬県内の消防団史等に記載された消防関係記事をピックアップ、さらに群馬県立文書館においても当時の史料を調査することを通して分析作業を進めた。明治期群馬県の消防組が、ラッパの使用に関して先進的であることは予備調査でも明らかになっていたが、群馬県内各地の「史誌」類からは、それを具体的に裏付けることができる。それは単に「喇叭」が使用されたというだけでなく、同じように記述が多い「演習」「点検」の隊列運動などと結びつけられているところに特徴がある。また、同時期の他県には見られない特徴として、消防用のラッパのメロディ(楽譜)がいくつか存在していた点があげられる。現時点では明治28~昭和15年までの間に、少なくとも8種のラッパ譜(タイトルのみが記載されているものも含む)が確認された。それぞれの楽曲を対照すると、昭和期にはほぼすべての楽曲を『陸軍喇叭譜』から流用することになるものの、明治期にはおそらく群馬オリジナルの消防ラッパ譜が流通していた。群馬県という一地方の消防組におけるこうした現象は(これが成立した社会的背景等についての調査は今後の課題であるが)、東京に関心を集中させがちな従来の音楽史が、まったく取り上げてこなかった。だが、都市圏に住む上流階級ではなく、地方の青年が担った音楽文化であるだけでなく、音楽界・教育界とは異なる消防の領域における音楽文化の存在を示した点に重要性があると考えている。

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