研究報告書 インドネシアにおける大正琴の伝播と受容に関する民族音楽学的研究

梅田, 英春

2017
内容記述
静岡文化芸術大学
美学・芸術諸学
本研究は、大正元年に日本で創作され、現在も日本各地で演奏されている大正琴のアジア各地への輸出の状況、また特にインドネシアにおける楽器の伝播、変容のメカニズム、またインドネシアでの演奏の現状を明らかにするものである。本年度は以下の2点1)戦前における大正琴の輸出状況と2)バリ島カランガッスム県におけるプンティンのアンサンブルの現状、に関する調査を実施した。1)大正琴が輸出されていた事実は、すでに金子敦子の先行研究の中に散見できる。本調査ではその事実を資料によって確認した。27年度の調査においては、昭和2年に設立された名古屋輸出楽器玩具工業組合の昭和9年版の『定款並諸規程』を調査した。この組合は大正琴を製造していた中小楽器製作所が設立した工業組合である。これからわかることは、輸出大正琴の質の厳密な検査箇所、方法、楽器製作所ごとの輸出数等である。輸出用の楽器は、楽器の材質、構造、部品の金属の種類などが細かく規定されており、粗悪品を海外に流出させないような厳密なチェックが行われていることが明らかになった。海外にはこうした検査を通った優れた楽器のみが輸出されており、結果的その品質の高さによって、インドネシアを含め、海外で受容されたことも考えられる。2)本調査の5年前に、バリ島東部カランガッスム県において、日本から伝播した大正琴が変容したプンティンとよばれる楽器のアンサンブルの存在を確認しており、27年度はこのグループの活動の現状、楽器の調査を現地にて行った。この調査において明らかになったのは、5年前に比べて使用される音階が多様になり、いわゆる五音音階のガムランでは演奏できない複雑な楽曲を演奏することができるようになった点にある。かつてはこれまでのガムランの楽曲をそのまま演奏していたものが、楽器の特徴に合わせ、次々と作品が創作されるようになっている。

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