Departmental Bulletin Paper 教育運動史研究の歩み(下の2) 教育運動史研究会の研究活動 -「新興教育運動」研究の進展と残された課題-

柿沼, 肇

133pp.1 - 46 , 2016-03-31 , 日本福祉大学福祉社会開発研究所
ISSN:1345-1758
NCID:AA11400593
Description
 本誌の前号(第132 号,2015 年9 月)で述べた「教育運動史研究会の研究活動」に引き続き,今後は,「研究内容」の面に即してその取り組みの成果と残された課題について明らかにすることが主題となる. この研究会(教育運動史研究会)が追究してきた「課題」は,大きく括ってみると以下の四つに整理することが出来る. ① 「新教懇話会」発足以来の主要課題である「新興教育運動」についての研究 ② 「新興教育運動」以外の「戦前の教育運動」の研究 ③ 「戦前の教育運動」の「戦後」への継承と,「戦後の教育運動」の研究 ④ 「現代の教育運動」の研究 そこで,まず今回の小論では,①の「新興教育運動」の研究に焦点を当て,そこで生み出された成果を検討・吟味することにした. 最初に取り上げたのは,「新樹叢書」として刊行された三冊の書籍と,その中に加わることが期待されていた論稿のことである.筆者は前者が池田種生,増渕 穣,山口近治の三氏,後者が小田真一氏で,いずれもこの運動の中枢にあってその発展のために全力を尽くした人たちである.これらの著作を通して,この運動がいかなる時代・社会状況の中で何を目指して展開されたものなのか,その「運動の全経過(前史から収束,その後)」とその運動が持っていた意味をより全面的・総合的に確かめることが出来るようになった. 第二は,「当時者」の筆になる二冊の「証言」記録集についてである.ここには中央の動向ばかりでなく,それぞれの地方(地域)や「教育の現場」で活動した様々な人たちの「喜び」や「苦闘」が「集積」されており,これらによってこの運動に対する認識をより「豊かなもの」にすることが出来る. 第三は,二度目の機関誌『新興教育』と,新たに発掘された新史料の復刻・普及のことである.これまで何度か指摘してきたことであるが,教育運動,とりわけ「新興教育運動」にとって当事者の「記録」や「証言」は極めて重要で不可欠なものである.が,それだけでは事柄の「正確さ」を十全に保障することは出来ない.個人の体験は運動の一部分であり,またその記憶には,それがいかに真摯なものであっても「誤解」や「誤認」を完全に避けて通ることは出来ないからである.資(史)料による裏づけがあることによって,そこにある「誤り」が正されたり,新しい発見が生まれてきたりするのである.その意味で,機関誌『新興教育』が再度復刻され,またたくさんの資(史)料が発掘されて多くの人たちの手に渡ったことはその後の研究の発展に大きな可能性を切り拓くものであった,といってよい. こういった諸成果の他にこの小論で取り上げたのは,○この運動の基本史料と重要論文を収録した「教育運動史研究資料」(第3 号まで)の発行,○この運動の生成・発展の上で大きな理論的役割を果たした名著の複製である「新興教育基本文献集成」(5 巻)の発刊,そして○新興教育運動の組織化の過程とその後の展開の上で大きな影響力を持った国際的な教育労働者の組織「エドキンテルン」(教育労働者インタナショナル)の研究について,である.またこの問題に関心を持つ人たちのためにいくらかでも役立つことがあればと考えて,「戦前」「戦後」の「エドキンテルン関係文献一覧」(未だ不充分さを免れていないが)を「資料」として付しておいた. 以上がこの小論で言及し得た中身である.当初の予定では「新興教育運動の研究」の全体について出来るだけのことを記すつもりでいたが,ここに述べただけでも所定の分量をはるかにオーバーしてしまった.そこでやむを得ず今回はここまでとし,その続きと冒頭に記した他の諸課題については次号(第134 号,2016 年9 月発行予定)に掲載出来るようにしたいと思う.
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