紀要論文 教育運動史研究の歩み(下の1)教育運動史研究会の研究活動─「通史」の企画・編集と,創意・工夫による諸取り組み─
Development and Stagnation of the History Research of Educational Movement (3-1): Research Activities of “Kyouiku Undoushi Kenkyuukai”
キョウイク ウンドウシ ケンキュウ ノ アユミ ゲノ1 キョウイク ウンドウシ ケンキュウカイ ノ ケンキュウ カツドウ ツウシ ノ キカク ヘンシュウ ト ソウイ クフウ ニヨル ショトリクミ

柿沼, 肇  ,  Hajime, Kakinuma

内容記述
「戦後」になって開始されるようになった「教育運動(史)」研究の最初の研究団体である「新教懇話会」は「新興教育運動」の研究を中心にほぼ10年間にわたって精力的な活動を展開した.その結果「会」の内外からの期待も大きく膨らみ,「新興教育運動」ばかりでなく近・現代日本の教育運動の総体に研究対象を広げる必要性が高まってきた.その期待に応えながら研究活動の一層の発展・飛躍を図るために,1968年8月,「懇話会」は「教育運動史研究会」へと改称・改組織する.新しく生まれ変わった教育運動史研究会(略称「教運研」あるいは「運動史研」)が取り組んだ活動は多様であるが,その初期の最も重要なものの一つが,「懇話会」の末期から持ち上がっていた日本の教育運動の「通史」を編纂する活動である.1960年に三一書房から新書版で刊行された『日本教育運動史』(全3巻)の後を受け,その後の研究の成果を十分に取り込んだ全く新しい形の『日本教育運動史』を企画・編纂し,その出版を図ることを目指した事業のことである.この取り組みは,1968年6月に始まり71年末まで3年余にわたって非常に活発に続けられたが,結局,実を結ぶことが出来なかった.しかしそこで繰り広げられた議論と到達した内容構成案(「企画原案」)は,今日に至るもそのままの形で生かされるということはなかったけれど,その後の教育運動史研究にとって深いところでおおいに参考になることが少なくなかった,その意味で貴重な「遺産」となったのである.この活動に引き続いて,あるいは平行して取り組まれた「教運研」の活動は,それを研究内容の面から大きく括ってみると,①「懇話会」の時以来の主要課題である「新興教育運動」についての研究,②新興教育運動以外の「戦前の教育運動」の研究,③「戦前の教育運動」の「戦後」への継承と,「戦後の教育運動」の研究,④「現代の教育運動」の研究,の四つに整理することが出来る.そして,それらの研究成果や調査報告,「当事者」の「証言」記録などの主要な「発表舞台」となったのが「夏季研究集会」と「機関誌」であった.「教育運動史研究会 夏季研究集会」の最初は,「懇話会」時代に開かれた三回の「新興教育シンポジウム」の後を受けて,「第4回 夏季集会」(1968年8月)と呼称された.以後,1991年の「第26回」に至るまで毎年8月一度も欠かすことなく開催されている.この間「集会」の充実・発展のために「企画内容」は勿論のこと,「基調報告」の採用,「集会要綱」の作成,「速報」の発行など様々な創意工夫がなされている.「機関誌」の方は,「懇話会」の時に出されていた『新教の友』と『新興教育複製版月報』を引き継ぐ形で,『教育運動史研究』(その最初のものは第10号,1968年9月)が発行されるようになった.1976年7月からは『季刊 教育運動研究』と改題され全く新しい形で公刊(市販)されるようになっている(発行所はあゆみ出版,そして途中休刊した後,一光社から復刊).しかしながら,目覚ましい発展を遂げた1970年代を経て,80年代に入ると「研究会」の活動に影がさしはじめ,会員数や夏季集会の参加者数,機関誌の読者数などの減少という事態に陥った.こういった状況の中で『教育運動研究』は1984年7月発行の第18号(通巻35号)をもって停刊のやむなきに至ってしまったのであった(但し,研究内容の質的面についていえば決して著しい停滞を招いたということではない).「研究会」活動として以上の他に『教育運動史研究ニュース』の発行という取り組みも見逃すことの出来ない重要な意味を持っている.「研究集会」や「機関誌」がいかに充実してもそれだけではどうしても会員間の日常的な交流や情報提供が出来にくい.そのような問題を克服し,また研究活動の組織的集団的な活動を一層発展させるために1970年4月に創刊され,以後1993年6月の第96号まで発行された.当初から月刊が目指されたが,なかなかそうもいかず途中中断された時期や間隔が長びいた時期もある.そのような時には『はがき通信』が出され,役割の一端を担ったのであった.こういった「当時者」と会員の熱意に支えられ,会長をはじめ運営委員,事務局員などの尽力によってわが国の「教育運動史研究」は展開されたのである.なお,当初の予定では,以上のような教育運動史研究会の研究活動について記した後に「研究内容」の発展とその成果について論ずるつもりであったが,紙幅等の関係で無理であった.そこで急遽方針を変更してその問題については次号(第133号)に掲載することにした.お詫びかたがた,ご了解をお願いしたいと思う.
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