紀要論文 過敏性腸症候群の脳腸相関における認知的要因の役割

菅谷, 渚

67 ( 1 )  , pp.69 - 73 , 2016-01-31 , 横浜市立大学医学会
ISSN:0372-7726
内容記述
過敏性腸症候群(Irritable Bowel Syndrome: IBS)は心理的要因が発症・悪化に関与することの多い消化器系心身症である.中枢神経系から腸へ,あるいは腸から中枢神経系へ双方向的に影響しあっており,それらの関連を視床下部-下垂体-副腎(hypothalamic-pituitary-adrenal: HPA)系や自律神経系,免疫系等が媒介する可能性が示唆されている.このようなネットワークがIBSの病態生理において重要な役割を持つと考えられる.また,IBSは心身両面からの介入が必要な疾患であり,心理的介入として認知療法あるいは認知行動療法の有効性が実証されている.近年では認知行動療法による介入効果やそのターゲットとなる認知とIBSの脳腸相関にかかわる各系との関連について報告されつつある.たとえば,IBS患者において,痛みに対する破局的認知の強さは右背外側前頭前野の厚さと強い負の相関を示されている.また,IBS保有者では急性ストレッサーに対するコントロール可能性の評価の低さと副腎皮質ホルモンとの相関が強く,IBSにおける認知とHPA系の関連の強さがうかがえる.さらに介入研究においては,認知療法によって海馬傍回と右帯状皮質下部の神経活動は低下し,辺縁系活動の変化は腹部症状や不安の改善に付随していることも報告されている.以上のように,脳腸相関における認知的要因の役割を解明することは,認知行動療法をはじめとした心理的介入をよりIBSの特徴に適したものに発展させることにも貢献すると期待できる.
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