会議発表用資料 2016年の福島県沖の海水と堆積物中の放射性セシウム濃度

福田, 美保  ,  山崎, 慎之介  ,  青野, 辰雄  ,  石丸, 隆  ,  神田, 穣太

2018-03-13
内容記述
1. はじめに 2011年3月に発生した福島第一原子力発電所 (福島第一原発) 事故に伴い大気、海洋や陸域に多くの放射性物質が放出された。2017年11月現在、福島県沖における海水と堆積物表層 (深さ0-3 cm) 中の137Cs濃度は、1.4-190 mBq/L, 2.2-370 Bq/kg-dryと事故前の福島県沖の濃度 (海水:0.06-7.6 mBq/L, 堆積物:0.15-2.3 Bq/kg-dry) と比べてまだ高い測点も見られるが、本事故発生直後の濃度範囲よりも概ね減少傾向にある [1]。福島県沖の海洋試料中の137Cs濃度の分布に着目すると、2013-2015年に海岸から沖合方向への距離 (以後海岸からの距離と記述) が0-5 kmの測点における海水の137Cs濃度は、5-50 kmの濃度よりも4.2-10倍高く、統計学的に有意差が認められている [2]。一方、堆積物中の137Cs濃度は水深100 m海域では他の測点よりも高い傾向にあり、その要因として粒径の小さい粒子の含有量や海底地形との関連性が指摘されている [3]。また、2013-2015年に福島県沖で採取した柱状堆積物 (深さ0-30 cm程度)の137Cs濃度は、大部分の測点で採取期間ごとの有意差は認められなかったことから、堆積物の137Csは海水に比べて動きにくいことが考えられる [4]。これまで多くの研究者によって、海洋環境での137Cs濃度の分布や挙動などについて明らかにされてきたが、海底面付近での137Csに関するデータは海水や堆積物に比べて少ない。海洋環境での137Cs濃度の将来予測を行う上でも、海底面での137Csの挙動の解明と同時に、海水や堆積物試料中の137Cs データを継続して取得する必要がある。本研究では2016年10月に採取した海水や柱状堆積物、柱状堆積物の直上にトラップされる海水 (堆積物直上水) 中の137Cs濃度について2013-2015年の結果と比較し、特に海底面付近での137Csの挙動について明らかにすることを目的とした。2. 試料採取および分析方法 東京海洋大学練習船「神鷹丸」(SY16-08:2016年10月) 航海にて福島県沖にて海水と柱状堆積物を採取した。採取測点は海岸からの距離が6.5-30 kmに位置していた。採取した海水は孔径0.20μmのフィルターを用いて濾過したのちに、AMP法 [5] を用いて測定試料を作製し、ゲルマニウム半導体検出器を用いて測定を行った。柱状堆積物は甲板に揚収し、約2時間静置後、チューブを用いて堆積物直上水の採取を行った。採取した直上水は海水と同様にAMP法を用いて濃縮し、ゲルマニウム半導体検出器を用いて測定を行った。堆積物試料は、1 cmごとに分割したのちに乾燥し、海水や直上水と同様にゲルマニウム半導体検出器を用いて測定を行った。得られた放射性セシウム濃度は試料採取日に補正を行った。3. 結果および考察  2016年の海水の溶存態137Cs濃度範囲 (mBq/L) は1.4-3.4で、幾何平均値は2.4であった。2013-2015年の各年の同測点における海水の溶存態137Cs濃度の幾何平均値 (mBq/L) は、9.3, 5.6, 5.2であり [2]、2016年にかけて減少傾向にあった点は他のモニタリング結果と類似していた。2013-2015年にみられた137Cs濃度と海岸からの距離との負の相関は2016年10月では認められなかった。しかし同海域で2016年11月に採取した海水の137Cs濃度は、海岸から沖合への距離が0-5 kmの測点と5-40 kmとの間で有意差が認められていた。従って、2016年10月に137Cs濃度と海岸からの距離との相関がみられなかった要因は海岸により近い、特に0-5 kmのデータが不足していたことが一因であると考えられる。同測点で採取した堆積物直上水の溶存態137Cs濃度 (mBq/L) は3.5-17で、海水と堆積物直上水の137Cs濃度との間に有意差は認められなかった。発表では、柱状堆積物の137Cs濃度も踏まえて、海底面付近での137Csの挙動に焦点を当てて議論する。本研究の成果は福島県放射線医学研究開発事業補助金および文科省科研費新術領域研究24110005の一部である。参考文献:[1] 原子力規制庁, (2018), [2] Fukuda et al. (2016) JRNC, 311, 1479-–179, [3] Ambe et al. (2014) JER, 138, 264-275, [4] Fukuda et al. (2018) GJ, 52, [5] Aoyama and Hirose (2008) Radioactivity in the Environment, 137–162.
第19回「環境放射能研究会」

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