会議発表用資料 メダカ胞胚期における致死線量以下の放射線被ばくは孵化時の脳の形態形成異常を誘導しない

保田, 隆子(東京大)  ,  永田, 健斗  ,  釜堀, みゆき(東京大)  ,  鈴木, 芳代  ,  横田, 裕一郎  ,  舟山, 知夫  ,  尾田, 正二(東京大)  ,  三谷, 啓志(東京大)

2017-10-27
内容記述
着床前期の哺乳類胚は致死高感受性であるが照射による奇形は起こらず、致死線量以下なら正常に発生すると報告されている。本研究では着床前の哺乳類胚における放射線影響を解明するためのモデルとして胞胚期のメダカ胚を用いて照射後の胚発生への影響を検討した。受精当日の胞胚期のメダカ胚全体にガンマ線(10 Gy)を照射した胚は全て致死となった。これに対し、5 Gyおよび 2 Gyを照射した胚では照射後3日目では非照射コントロール胚に比して頭部が明らかに小さかったが、翌日までに急激に成長して非照射胚と同程度の大きさに回復した。孵化しなかった胚では覆いかぶせ運動は正常に進行し胚体が形成されるものの照射後3日目までに奇形死となり、頭部の形態異常をもって孵化した胚はなかった。さらに、量研高崎のTIARA炭素線マイクロビーム照射装置を使用して胞胚期の胚の胚盤胞の中央部および周辺部を局所照射して胚発生への影響を検討した。照射の部位には関係なく、照射野が狭い場合には胚の孵化率は低下せず照射野が広い場合に胚性致死となった。胚性致死しなかった胚(直径120 um, 50 Gy or 180 um 5Gy) では、ガンマ線照射胚と同様に照射後3日目までは頭部が小さいが、照射後4日目までに急激に頭部が成長して正常な大きさに成長した。一方、受精3日後胚にガンマ線(10 Gy)、炭素線ブロードビーム(2 Gy) を全体照射した胚は胚死を起こすことなく全て孵化し遊泳能力も有するものの、その頭部は非照射胚のそれよりも明らかに小さかった。これらの結果は、致死線量以下の放射線被ばくにおいて、後期胚期での被ばくでは損傷し減少した細胞数を補償することが出来ないが、胞胚期では全細胞が万能性を有しているため、放射線被ばくによって損傷し失われた細胞分が生残する細胞によって補完されて胚発生が正常に進行し脳に形態異常が認められないものと考えられる。
日本放射線影響学会第60回大会

このアイテムのアクセス数:  回

その他の情報