会議発表用資料 福島県沖の堆積物直上水の放射性セシウム濃度分布

福田, 美保  ,  青野, 辰雄  ,  山崎, 慎之介  ,  石丸, 隆  ,  神田, 穣太  ,  平譯, 亨

2017-10-16
内容記述
1. はじめに  2011年3月に発生した福島第一原子力発電所 (福島第一原発:FDNPS) 事故後、海洋や大気、陸域に多くの放射性物質が放出された。堆積物中の137Cs濃度は、海水と比べて緩やかに減少している [1]。福島県沖のイカナゴやカタクチイワシなどの表層魚の137Cs濃度は、海水の137Cs濃度の減少と共に、数ヶ月で100 Bq/kg-wet以下まで減少した。一方、海底面付近に生息するカレイやヒラメなどの底層魚の137Cs濃度は、表層魚に比べて変動幅が大きかったが、減少する傾向にある [2]。海洋生物への放射性核種の移行やその影響を解明する上で、海底面付近での放射性セシウム濃度の挙動を明らかにすることは不可欠である。そこで本研究では、海底面付近での溶存態放射性セシウム濃度の分布と変動を明らかにすることを目的とした。2. 試料採取および方法 堆積物試料は、東京海洋大学練習船「海鷹丸」(UM14-04:2014年5月) および「神鷹丸」(SY14-10:2014年10月、SY16-08:2016年10月)、北海大学水産学部付属練習船「おしょろ丸」(OS15次:2015年7月、OS26次:2016年6月) 航海で福島県沖の13測点にて多筒式柱状採泥器 (マルチプルコアラー)を用いて採取した。このマルチプルコアラーを甲板に揚収後、採取処理の過程で巻き上がった浮遊物の動きを安定させるために約2時間静置したのちに、チューブを用いて堆積物直上水の採取を行った。採取した直上水は孔径0.45μmと0.20μmのメンブランフィルターを用いて濾過を行い、孔径0.45 μmメンブランフィルターを通過した直上水をF1画分、孔径0.20 μmメンブランフィルターを通過した直上水をF2画分とし、分画した。各画分中の放射性Cs濃度はAMP法 [3] とゲルマニウム半導体検出器を用いて測定を行った。計測された放射性Cs濃度は試料採取日に補正をした。3. データ解析得られた各画分の137Cs濃度をもとに、i) 各測点でのF1とF2画分の137Cs濃度およびii) 137Cs濃度の濃度変化の2項目について、等分散を調べるためにF検定を行なった。等分散を示した場合には両者に有意差が見られるか、t検定を行った。等分散を示していなかった場合には、Wilcoxon の順位差検定を行い、有意差の有無を調べた。各検定の判定は、P < 0.05 levelとした。4. 結果および考察 直上水中の137Cs濃度はF1画分で2.3から27 mBq/L、F2画分で2.4から31 mBq/Lであり、各測点でのF1とF2画分中の137Cs濃度に有意差は認められなかった。このことは、直上水の溶存態137Csは、粒径依存が見られないことを示す。さらに時間変化に着目すると、採取期間の間での直上水中 (F1とF2画分の区別なし) の137Cs濃度に有意差は見られなかった。また、同測点で採取した海洋表面と海底面から約5-10 mの水深で採取した底層水中の溶存態137Cs濃度(孔径0.20 μmメンブランフィルターを用いてろ過)は1.4から10 mBq/Lであり、直上水の137Cs濃度はそれらの海水よりも1.6から3倍高いほどであった。このことから調査海域において、海洋表面から海底面までの溶存態137Csは同レベルの濃度で安定して存在していることが分かった。 発表では堆積物中の137Cs濃度分布や時間変化の結果と比較し、海底面付近でのCsの挙動についてさらに議論する。本研究の成果は福島県放射線医学研究開発事業補助金および文科省科研費新術領域研究24110005の一部である。参考文献[1] 原子力規制庁, 2017, 放射線モニタリング情報, http://radioactivity.nsr.go.jp/ja/list/428/list-1.html.[2] 水産庁, 2017, http://www.jfa.maff.go.jp/j/housyanou/kekka.html.[3] Aoyama M, Hirose K (2008) In P. P. Pavel (Ed.) Analysis of Environmental Radionuclide, Radioactivity in the Environment vol. 2. Elsevier, London, Amsterdam.
日本海洋学会 2017年 秋季大会

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