会議発表用資料 新規Chk1阻害剤MK-8776の放射線増感標的としての効果の検討

鈴木, 基史

2017-09-07
内容記述
【目的】放射線に暴露されたがん細胞では、G2/Mチェックポイントが活性化し、細胞周期が停止する。このG2/Mチェックポイント活性化に寄与するリン酸化酵素としてChk1が知られている。古典的Chk1阻害剤であるUCN-01 (UCN)はG2/Mチェックポイントを不活化し、細胞の放射線感受性を増強する事が以前より報告されてきた。しかしながら、UCNはその特異性等の問題から実用化が難しく、この問題を克服するため様々なChk1阻害剤が開発されている。本研究では、近年開発されたChk1阻害剤であるMK-8776 (MK)の放射線増感剤としての効果をUCNと比較し、その増感効果をもたらす機構を明らかにする事を目的とした。【方法】細胞はマウス乳がんEMT6細胞を使用した。細胞のX線に対する感受性はコロニー形成法により評価し、10%生存線量から増感比 (SER)を算出した。DNA2本鎖切断 (DSB)レベルは細胞当たりの53BP1フォーカス数により評価した。核形態及び細胞内の中心体数はDAPI及びγ-tubulin抗体を用いた免疫染色により評価した。【結果】UCNまたはMKとX線を併用したところ、両阻害剤で増感効果が認められ、SERはそれぞれ1.05及び1.26であった。次に各Chk1阻害剤がDSBレベルに及ぼす影響について評価したところ、DSBの生成・修復の両過程においてChk1阻害による有意な変化は認められなかった。細胞の分裂異常は放射線による細胞死と深く関連している事から、X線照射後の核形態に対するChk1阻害剤の影響を次に検討した。その結果、両阻害剤はX線照射後の核形態異常を増強したが、UCNでは微小核のみが増加したのに対し、MKでは微小核の大幅な増加だけではなく、分葉化または断片化した核も増加した。さらに、その際の中心体の状態を評価したところ、MKでのみ過剰な数の中心体を有する細胞が有意に増加した事から、MK処理は細胞分裂過程により大きな影響を与えている事が示唆された。以上より、MKはUCNに比べ優れた放射線増感剤であり、MKによる増感効果には分裂異常の増加が寄与している可能性が示唆された。
平成29年度文部科学省新学術領域研究 学術研究支援基盤形成【先端モデル動物支援プラットフォーム】若手支援技術講習会

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