会議発表用資料 福島県沖の堆積物と直上水中の放射性セシウム濃度との関係

福田, 美保  ,  山崎, 慎之介  ,  青野, 辰雄  ,  石丸, 隆  ,  神田, 穣太

2017-03-15
内容記述
1. はじめに 2011年3月に発生した福島第一原子力発電所 (福島第一原発) 事故に伴い環境中に放出された放射性物質は、海水を通じて堆積物にも移行した。堆積物中の放射性物質の一部は、粒子態として再懸濁、もしくは溶存態として海水へと再溶出する。福島県沖の海底地形は、小名浜よりも北部の海域で水深 50-120 mに海底斜面、水深20-60 mと120 m以深に平坦面が分布しているのに対し、小名浜よりも南部の海域では水深0-50mに海底谷や海底谷の海脚などの起伏に富む地形、水深50 m以深はなだらかな海底であることが報告されており、北部と南部では地形が大きく異なる [1]。波浪作用の限界水深は晴天時で20 m、荒天時で80 m [2] であるため、水深 100 m以浅の海域では波浪に伴う浸食や再堆積作用の影響を受けやすい。従って堆積物中の放射性セシウム (Cs) 濃度や蓄積量の長期変化を推測するためには、堆積物と海底面付近の海水間のCs移行を明らかにすることが必要である。しかし、CTD (Conductivity-Temperature-Depth: 電気伝導度 (塩分)-水温-深度計) を搭載した採水器を用いて底層水採取を行う場合には、搭載したセンサーを海底面に接触しないように海底面から5-10 m上部の水深での採水しかできない。そこで本研究では、柱状堆積物採取時に堆積物の直上にトラップされる海水 (堆積物直上水) と堆積物中の放射性Cs濃度との関係を明らかにすることを目的とした。2. 試料採取および分析方法 東京海洋大学練習船「海鷹丸」(UM14-04:2014年5月) 航海にて測点I01 (37°14’N, 141°07’E, 水深:60 m), I02 (37°14’ N, 141°13’ E, 水深:120 m) および C (36°55’ N, 141°20’, E,水深:190 m) の3測点について多筒式柱状採泥器 (マルチプルコアラー)を用いて堆積物を採取した。このマルチプルコアラーを甲板に揚収後、採取の過程で人為的に巻き上がった浮遊物の動きを安定させるために約2時間静置したのちに、チューブを用いて堆積物直上水の採取を行った。採取した直上水は、孔径0.20μmのフィルターを用いて濾過したのちに、AMP法 [3] を用いて測定試料を作製し、ゲルマニウム半導体検出器を用いて測定を行った。得られた放射性Cs濃度は試料採取日に補正を行った。3. 結果および考察  堆積物直上水中の溶存態137Cs濃度 (mBq/L) は3.1 から16で、測点I01、I02、Cの順番に濃度が高かった。堆積物表層 (深さ0-3 cm) 中の137Cs濃度 (Bq/kg-dry) は8.4 から286で、シルトから粘土粒子の割合が高かった測点 I01とI02の137Cs濃度が測点Cよりも高かった。また底層海水 (海底面から約10 m上部の水深にて採水) 中の溶存態Cs濃度と比較した結果、測点I02とCの底層海水中の137Cs濃度は直上水とほぼ同じ濃度であったのに対し、測点I01の底層海水中の137Cs濃度は直上水よりも約1/5と低い濃度であった。さらに直上水と堆積物表層中の堆積物中の137Cs濃度を用いて見かけの分配係数Kd’ (L/kg) 値を算出した結果、8.8×102から1.5×104であり、この値はIAEA TRS422 [4]で報告されているCsの推奨値 (2.0×103) と同程度であった。発表では、他の時期に採取した試料や粒子サイズごとのCs濃度結果についても報告し、これらの結果から濃度分布の要因などについて考察する。本研究の成果は福島県放射線医学研究開発事業補助金および文科省科研費新術領域研究24110005の一部である。参考文献:[1]茂木と岩淵 (1961) 地理学評論, 34, 39-58. [2]斎藤 (1989) 地学雑誌, 98-3, 164–179. [3] Aoyama and Hirose (2008) Radioactivity in the Environment, 137–162. [4] IAEA (2004) IAEA Technical reports series no. 422.
第18回「環境放射能研究会」

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