Conference Paper 積算線量計を用いた樹木内放射能簡易測定技術の開発

栗田, 圭輔

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 森林は平地よりも多くの放射性物質を沈着しており、また沈着した放射性物質を接続する河川などへと流出させる可能性があることから、森林における放射性物質の移行や循環を把握し、予測することは非常に重要である。しかしながら、従来の手法では測定に多くの労力が必要であることや侵襲的であることから、広範囲の長期観測には不向きであった。このため新たな測定技術の開発が望まれており、我々は市販の積算線量計を用いた簡易測定技術を開発している。 積算線量計の計測結果から樹体内の放射能を見積もるには、樹体内における放射線の散乱や減衰を把握しておくことが必要である。実際に樹木を測定する際、放射線が樹体内で散乱し、エネルギーを落とすことで、検出器がカウントする低エネルギー放射線成分が増え、樹木の無い場合に比べ計測値が上昇することが予測される。そこで、モンテカルロシミュレーションにより、放射線の散乱や減衰などを考慮に入れた計算を行い、線量率への影響を確認する。今回は、線量計の周囲物質による放射線の散乱・吸収が、線量計の示す線量率へ及ぼす影響を、PHITSコードを用いたモンテカルロシミュレーションによって評価した。 シミュレーションは、大型計算機BX900を用いて行った。原点から662 keVの光子を放射状に発生させ、これをCs-137点線源とし、線源から10 cm離れた箇所にSiの検出器を設置した。検出器の大きさは3 mm×2.5 mm×0.5 mmとし、実際に用いる積算線量計の検出器と近い構造にした。線源と検出器との間には、空気もしくはスギの生木を設置し、それぞれの場合において、検出器に入射した光子が検出器に付与したエネルギーの分布をシミュレーションした。シミュレーション結果から、検出器に対し60 keV以上のエネルギーを付与した放射線の計数率(count/h)を求め、D-シャトルの校正曲線により線量率(μSv/h)へと変換した。 線源と検出器との間に木を配置した場合と空気で満たした場合との線量率を比較したところ、木を配置した際の線量率に比べ、空気で満たした際の線量率は77%程度であった。また、検出器に付与したエネルギーの分布において、木を配置した場合は低エネルギー領域のカウント数が増加していた。以上のことから、光子が木により散乱された影響により、低エネルギー領域のカウント数が増え、線量率が増加することがわかった。

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