会議発表用資料 蛍光飛跡検出器を用いたイオントラック計測技術と放射線生物学への応用

小平, 聡  ,  小西, 輝昭  ,  小林, 亜利紗  ,  蔵野, 美恵子  ,  Akselrod, Mark

2016-09-22
内容記述
荷電粒子の通過に沿って生じた電離電子は、例えば材料中の格子欠陥や不純物に捕捉され蛍光中心となり、これらを蛍光飛跡(トラック)として観測するものを蛍光飛跡検出器(Fluorescence Nuclear Track Detector: FNTD)と呼んでいる。Mgを添加した酸化アルミニウム単結晶を母材とした蛍光飛跡検出器は、荷電粒子の通過に伴って材料中に形成された蛍光中心を共焦点顕微鏡系で読みだすことによって、その通過痕を蛍光トラックとして観測することができる。具体的には、Al2O3;C,Mg単結晶は2つの酸素空孔と2つのMg2+イオンから構成される非常に多くのF22+(2Mg)を含む。この単結晶に放射線照射すると、これらの欠陥は異なる荷電状態のF2+(2Mg)となる。この放射線由来のカラーセンター(F2+(2Mg))が635 nmのレーザーによる光刺激により750 nmにピークを持つルミネッセンスを発し、75 nsという非常に速い時間で減衰する。蛍光トラックの蛍光強度は電離損失量の関数となるので、予めその応答関数を較正しておけば、未知の場で計測したトラックのLET(線エネルギー付与)を知ることができる。従って、各トラックのLETスペクトルの積算から吸収線量を評価することができ、線質の評価も可能である。LETスペクトロスコピーによって、重粒子線とその核破砕二次粒子や、宇宙放射線のような混在場において、定量的な線量評価が可能となる。トラックは位置情報を有しているので、FNTD上のトラック分布をマクロに可視化すれば、オートラジオグラフィが可能である。位置分解能は顕微鏡精度(サブミクロン)で決まるため、マクロオートラジオグラフィ像の中にトラックが局在していれば、その局所的な線量評価が可能である。例えば、RI内用療法やBNCTにおいて、そのα線トラックや電子でさえも、その線量分布を臓器レベルやシングルセルオーダーで可視化できる。FNTD自身は電気回路やバイアス電源を必要としない「ただの板切れ」であるので、FNTD上に細胞を培養するような系を生物実験に持ち込むことも可能である。実際、ヒト線維肉腫細胞HT1080細胞をFNTD上に培養した試料を、HIMACにおいてNeビームを照射し、共焦点顕微鏡を用いて重イオンヒット位置の蛍光トラックと、DNA二重鎖切断の位置をγ-H2AXに対する蛍光を可視化することで物理付与線量と生物応答を一対一対応させることに成功している。この成果によって、これまでのランダム照射による細胞へのヒット確率がLETの異なるイオンビームで異なる問題を解決することによって、これまでの放射線生物学で問題となっているRBE(生物学的効果比)のLET依存性の新たな解釈や、タイムラプス法を用いた細胞死・修復過程の研究に貢献できると期待される。
第59回放射線化学討論会

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