一般雑誌記事 我が国における土壌ー農作物間移行係数について

内田, 滋夫

45pp.4 - 12 , 2016-08 , 一般財団法人 九州環境管理協会
ISSN:1344-3917
内容記述
原子炉を多く保有している我が国では、使用済み核燃料を再処理するにしても、直接処分するにしても、自国内での放射性廃棄物処分が必要である。再処理によって出てくる高レベル廃棄物や使用済み核燃料を安全に処分するための最も有望な方法は、地下深くに埋設することである(特定放射性廃棄物の最終処分に関する基本方針、H27年5月22日閣議決定)。処分地の選定に必要な地質環境条件なども検討が進んでいるが、最終的には放射性廃棄物処分の安全評価において,将来に渡って人が受ける被ばく線量が十分低いことが説明できなければならない。その期間は100万年程度を見越して考えられている。このような超長期においては地下の廃棄物処分場から生物圏に放射性核種が到達する可能性がある。その経路として我が国では、基本的には処分場から放射性核種が地下水等により生物圏に移動すると考えられている。その後、生物圏に到達した後の核種移行プロセスとこれによる被ばく経路についてモデル化を行い,人間への影響を評価しなければならない。 これまで,我が国の状況を反映した生物圏における放射性核種の移行モデルが提案・開発されてきた(核燃サイクル機構、H12レポート)。線量評価を行う上で考慮される放射性核種の環境移行パラメータのほとんどは,我が国独自のものではなく,欧米で得られた値が中心である。しかし生物圏において,環境移行パラメータはその地域の環境や人間活動に大きく影響されることは無視できない。例えば,人々がどのような食品を摂取しているかということは、対象とする国や地域により異なる。したがって、放射性核種の主要な移行経路も,当然異なることになる。我が国は米を主食とし、魚介類の摂取量が多いという特徴がある。 さらに,環境移行パラメータを使う上で重要なことは,その値は地域特性を反映している点である。すなわち,気候,土壌,栽培条件など,生育環境が異なっているため,同じ農産物であっても欧米の国で得られたパラメータ値がそのまま我が国で使えるとは限らない可能性がある。また、地域独自の農産物が生産されていることから、必ずしも適切なパラメータ値を与えることができない。したがって、欧米で得られている移行経路およびそのパラメータについて,我が国で適用できるかどうかを検討し,適用できないものについては,我が国において,現実的な移行パラメータを整備しておくことが、我が国の安全評価を適切に行うために必要である。放射線医学総合研究所では多くに環境移行パラメータを収集してきた。本報告では,土壌-農作物間移行係数(TF)の概要を記す。

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