会議発表用資料 重イオンビーム照射が多年生植物に与える生物影響評価

西原, 昌宏  ,  黒川, 良美  ,  千葉, 恵美子  ,  樋口, 敦美  ,  山田, 恵理  ,  岡村, 正愛  ,  内藤, 善美  ,  浅川, 知則  ,  古澤, 佳也  ,  下川, 卓志  ,  佐々木, 伸大

2016-05-27
内容記述
1. はじめに 重イオンビームを用いた植物の突然変異の誘発研究は、わが国独自のバイオ技術として開発、利用されてきた。重イオンビーム照射による植物の突然変異誘起はX線やγ線といった他の放射線を用いた場合よりも、高い変異率でかつ変異のスペクトルも広いことが示唆さおり、植物の育種のツールとして期待されている。しかし、重イオンビーム照射によって誘起される生物影響や変異率、また変異のスペクトルといったものについての詳細な研究は未だ乏しいのが現状である。重イオンビームは照射するイオン種、強度、また、照射する植物種や組織によって生物影響が異なるため、多くの実験例を収集し、比較検討することが効率的な育種への応用につながると期待される。また、このような高変異率の変異原は、形質の確認に年数を要する樹木等の多年生植物に応用することでそれらの育種の年限を短縮することに大きく寄与すると考えられる。そこで、当研究グループでは数年前から、放射線医学総合研究所のHIMACを用いて多年生草本の一種であるリンドウの幼植物体と木本植物であるリンゴ穂木への重イオンビーム照射実験を行っている。 当研究グループではこれまでにリンドウの幼植物体へNe、Arイオンビームを照射した際の生物影響について第10回の本学会で報告した。そこで、今回はリンドウへのCイオンビームを照射した場合の生物影響と、倍数性の違いによる生物影響の差異について報告する。また、リンゴ穂木へC、Ne、Arイオンビームを照射した場合の生物影響についても併せて報告する。2. 材料および方法 重イオンビーム照射は放射線医学総合研究所のHIMAC生物実験室にて行なった。イオン種としてC(エネルギー:290 Mev/u, LET計算値:13 keV/μm)、Ne(400 MeV/u, LET計算値:30 keV/μm)とAr(500 MeV/u, LET計算値:89 keV/μm)を用いた。照射材料として、リンドウについては岩手県農業研究センターで育成された品種‘アルビレオ’の無菌培養物を用いた。また、この2倍体品種をコルヒチン処理によって染色体倍加を行なった4倍体の系統についても実験を行った。培養個体は約7 cm四方の培養容器を用いて厚さ3 cm程度の固体培地上で維持し、培養容器ごと照射に供試した。照射は継代後数週間程度経過し、地上部が5 ~ 6 cm 程度に伸長し、根が伸長した条苗へ行った。照射した培養個体は節ごとに切り出して新鮮培地に継代し、その後の生長量を観察した。生長量は伸長してきた地上部の長さを測定することで評価を行った。リンゴについては、岩手県農研センターで育成された品種「大夢」の穂木に重イオンビーム照射を行い、台木に接木した後に圃場で育成した。その後伸長してきた新梢の長さを測定して生長量の比較を行った。3. 結果および考察 リンドウ品種 ‘アルビレオ’ 培養物にCイオンビームを照射してから20日後に地上部を節ごとに切り出し、新しい培地に移植し、その後の生育を観察した。継代後 54日後の‘アルビレオ’の生長量を測定した。(図1A)。未照射の場合と比較して、10 Gy照射区では約49%の成長率であり、15 Gy以上では生育が強く抑制された。植物の倍数性と重イオンビーム照射による生物影響の相関を検討するために、‘アルビレオ’の2倍体と4倍体の培養物にNeイオンビーム照射を行って、生物影響評価を検討した(図1B)。その結果、2倍体では強い生育抑制が見られた 8 Gy以上の照射区においても、4倍体系統はそれほど強い成長抑制は見られなかった。このことから、植物の倍数性が高次になるほど重イオンビーム照射への感受性が低下することが示唆された。 リンゴ品種‘大夢’穂木にイオンビーム照射を行って、接木したものを圃場に植栽して、その後の伸長してきた新梢の長さの計測を行った(図2)。その結果、Cイオンビームでは20 Gy照射区で、Arイオンビームでは8 Gy照射区で概ね50%程度の生長量となった。Neイオンビームでは生長量が50%程度に抑制されるためには25 Gy以上の照射が必要であると考えられた。
イオンビーム育種研究会 第11回大会

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