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複雑な構造を持つDNA二本鎖切断の修復経路と細胞応答複雑な構造を持つDNA二本鎖切断の修復経路と細胞応答 |
"/矢島, 浩彦/"矢島, 浩彦 ,
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"/小原, 麻希/"小原, 麻希 ,
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"/安井, 明/"安井, 明
Description
DNA二本鎖切断 (DSB) に対する主要な修復経路として非相同末端結合 (NHEJ) と相同組換え (HR) が知られている。各修復経路がどのように選択されるかに関しては未だ不明な点が多いが、DSB構造の複雑さが重要な決定要因の一つであることが明らかになってきており、複雑な構造はDNA end resectionを促進する。DNA end resection はHRの初期過程としてDNA末端の5’ 鎖側を削り込んで3’一本鎖DNAを露出させる反応であり、CtIPとともに作用するMRE11ヌクレアーゼによって始動すると考えられている。重粒子線は線エネルギー付与 (LET) 値の高い放射線であり、生じるDSBはクラスター損傷を含む複雑なものであるためにNHEJでは修復されにくい。私たちは、重イオン粒子の飛跡上に生じたDSBの80%以上はresectionを受けていることを明らかにし、また、増殖中のヒト培養細胞では、G1期でも30%前後が重粒子線照射後にCtIP依存的なresection活性を示すことも報告した。この活性については他グループの報告によっても確認され、X線によるDSBでは観察されないことが報告された。従って、複雑なDSBの修復には細胞周期に関わらずCtIPが大きな役割を果たすと考えられる。私たちは、resectionの始動後にもCtIPが何らかの機能を持っていると考えており、CtIPを中心として複雑なDSBの修復経路の解析を進めている。一方、重粒子線照射を受けた細胞ではATR依存的なG2/MチェックポイントがATM非依存的に活性化していることも私たちは明らかにした。複雑なDSBがresection反応を促進し、生じた一本鎖DNAによってATRが活性化されるためだと考えられる。このことは、DSB構造の複雑さが修復経路の選択に影響を与え、その結果として主要なシグナル経路の変換にまで影響を及ぼしていることを示唆する。修復経路選択がチェックポイント以外の細胞応答に与える影響に関して解析を進めている。
BMB2015 第38回日本分子生物学会年会 第88回日本生化学会大会 合同大会