会議発表用資料 全反射蛍光X線分析法を用いたウラン汚染水の高感度分析

松山, 嗣史  ,  吉井, 裕  ,  伊豆本, 幸恵  ,  濱野, 毅  ,  酒井康弘  ,  栗原, 治  ,  藤林, 康久

2015-10-29
内容記述
【はじめに】X線の物質に対する屈折率は1よりわずかに小さい1).そのため, 空気層から極めて小さい視斜角 (90°-入射角)でX線を物質に入射すると全反射する.このX線の特性を利用し, 試料台に滴下した試料に極めて小さい視斜角でX線入射し, 法線方向で試料から放出された蛍光X線を観測することで取り込む散乱線が減少し, ほぼ標的から放出された蛍光X線のみを観測することが可能である.このような測定手法を全反射X線分析法 (TXRF : total reflection X-ray fluorescence)と呼び, これまでワイン中の微量元素2)やミネラルウォーター内の微量金属元素3)などが分析されてきた.従来の蛍光X線分析法 (XRF : X-ray fluorescence)と全反射蛍光X線分析法の概要をFig. 1に示す.従来の蛍光X線分析法では13 keV以上のエネルギー領域において入射X線による散乱が大きいため, このような領域にピークを持つウラン(U)などの重元素の分析を行う場合, 十分なS/Nを確保することが困難である.一方, 全反射蛍光X線分析法ではU L線のエネルギー領域におけるバックグランド信号強度が少ないため, 従来の蛍光X線分析法よりも高感度に水溶液中のウラン濃度を定量できると期待される.これまでのわれわれの研究において, 全反射蛍光X線分析法を用いて汚染水のウラン濃度を定量する方法を開発しており4), その方法における排水中のウランの検出下限値は法令で定められる排水中のウランの濃度限界値の1/10程度であった.しかし, 一般に排水調査に用いる場合, 排水中の濃度限界値の1/100程度の検出下限値が求められる.そこで, 本研究ではウランに汚染された水を模して模擬ウラン汚染水を作成し, それを簡易エバポレーターで濃縮した後に全反射蛍光X線分析することで, ウラン汚染水を高感度に分析する方法の開発を行った.【実 験】純水にウラン希釈系列を一定の割合で混合させることで模擬ウラン汚染水を作成した.作成した模擬ウラン汚染水の最終ウラン濃度は0, 0.125, 0.25, 0.5, 1 ppmである.そして, 簡易エバポレーターであるコンビニ・エバポ(バイオクロマト社)を用いて模擬ウラン汚染水600μLを蒸発・乾固し, 60μLの希硝酸(0.1 M)で乾燥残渣すべて溶解することで10倍濃縮した.フッソ・プラコート(ファインケミカルジャパン株式会社)を用いて撥水加工した石英ガラス基盤(シグマ光機)に濃縮した模擬ウラン汚染水を10μL滴下・乾燥させたものを可搬型全反射蛍光X線分析装置200TX(ourstex社)で3分間測定した.試料を濃度に対して4つ作成した.測定条件は, 乾電圧:40 kV, 管電流:0.2 mAである.【結果と考察】Fig.2に濃縮前のウラン濃度が1 ppmである模擬ウラン汚染水の蛍光X線エネルギースペクトルとU L線付近を拡大したものを示す.空気中のアルゴンや試料台の主成分であるシリコン, X線管のターゲットであるタングステン, 模擬ウラン汚染水に含まれるカルシウムやウランのピークが観測された.ウランはL-X線以外にもM-X線も観測されたが, M-X線は他の元素のピークと重なるため, L-X線で解析を行った.そして, ウランのLα線 Net信号強度と濃縮前のウラン濃度には直線性が得られた.一般に検出下限値 (MDL:Minimum detection limit)はMDL = と定義される.ここで, CはU濃度 [ppm], INetはUのNet信号強度 [cps], IBGはバックグランド信号強度 [cps], tは測定時間 [sec]である.濃縮前のウラン濃度が0.125 ppmの測定点を用いて, 検出下限値を0.011 ppmと算出した.このMDLを放射能に換算すると, 1.4×10-4 Bq/cm3であった.法令で定められるウランの排水中の濃度限度は2.0×10-2 Bq/cm3 5)であり, 本研究における検出下限値は法令で定められる排水の濃度限界値の1/100程度であった.【おわりに】本実験ではウランに汚染された水を模して模擬ウラン汚染水を作成し, それを全反射蛍光X線分析することでウラン汚染水を迅速かつ簡便に分析する方法の開発を行った.汚染水を濃縮することで, 排水中のウランの濃度限界値の1/100程度の検出下限値を得ることができた.このことから, 本手法は核燃料取り扱い施設等の排水の定期点検や原子力発電所事故の廃炉作業中に発見された汚染水の分析に適応することが可能である.【参考文献】1) 河合潤 表面科学:表面科学, 22, 6, (2001)2)  M.J. Anjos et. al, Spectrochimica Acta part B, 58, (2003)3) Kunimura et . al BUNSEKI KAGAKU, 57, 2, (2008) 4) 松山嗣史 et.al, 日本分析化学会 第64年会 要綱集5) アイソトープ法令集 (Ⅰ) 2014年版, 丸善出版株式会社, (2014)
第51回X線分析討論会

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