会議発表用資料 シンクロ・ベータトロン共鳴結合による 間接的横方向レーザー冷却の実証

中尾, 政夫

2015-03-21
内容記述
レーザーを用いて物質を極低温に冷却するレーザー冷却の技術が確立されてきたが、蓄積リング内を高速で周回するイオンビームに対してもレーザー冷却を適用する研究が各地で行われてきた[1,2]。蓄積リング内では、ビームとレーザーをオーバーラップさせる必要があるためにビームの前後方からのみレーザーを照射でき、直接的に冷却できるのはビームの進行方向成分のみである。横方向成分は、ビーム間の散乱[3]やdispersionの効果[4]によって間接的に冷却されるが、より冷却効率の高い能動的な手法として、シンクロ・ベータトロン共鳴結合法(SBRC)が提案された[5,6]。この方法では、ベータトロンチューンとシンクロトロンチューンを差が整数になる差共鳴の条件にし、有限のディスパージョンの区間にドリフトチューブを置いて加減速することで、進行方向と横方向を結合させ、進行方向の冷却力を横方向に移して能動的な横方向の冷却を行う。SBRCを用いることで、ビームを三次元的に極低温まで冷却することができ、シミュレーションによる研究では3次元の結晶化ビームを実現できると予測されている[7]。京都大学化学研究所に建設された小型イオン冷却蓄積リングS-LSR[8]は、結晶化ビーム生成のために必要な6回対称なラティス構造を持ち、偏向電磁石内にはdispersion制御のための電極を挿入可能にしている[9]。また、レーザーとイオンビームのオーバーラップを最適にするため特にレーザー冷却部ではCODが最小になるようにしている[10]。レーザーを導入するためのブリュースター角付きの石英ガラス窓、ビームの光学観測のための光電子増倍管、冷却CCDカメラが設置されている[11]。このS-LSRにおいて、40keVの24Mg+イオンのレーザー冷却実験が行われてきた[12]。冷却用のレーザーとしては波長532nmの固体レーザーにより560nmのリング色素レーザーを励起し、その出力を倍波発生器に導き280nm、15mWの紫外線レーザーを得ている。これをS-LSRの直線部分でイオンビームの進行方向と同方向で合流させることでビームを冷却する。イオンビームをバンチ化して、rf電圧による減速力をレーザー冷却の対抗力とすることで1本の、周波数を固定したレーザーで冷却を実現した。また、このレーザーによって励起されたイオンビームからの脱励起光を用いてビームの状態を診断した。 ベータトロンチューンを(2.068, 1.105)の条件とし、シンクロトロンチューンを0.0376から0.1299の範囲で変化させた場合に、CCDカメラで撮影したビームのイメージサイズは、シンクロトロンチューンが となり、水平方向のベータトロンチューンと差共鳴になるSBRC条件で極小値0.55mm をとった。この極小値におけるビームの水平方向温度は200Kに相当する。同時に、PAT[13]で測定した進行方向の運動量広がりは、SBRC条件で極大値をとった。温度に換算すると、非共鳴状態では14Kであったものが21Kに上昇した。この結果はSBRCによって水平方向の熱が進行方向に移行したことを示唆している[14]。ビーム粒子数の減少により冷却効率はさらに向上し[15]、ソレノイド磁場と誘導起電力を用いた24Mg+イオンの3次元レーザー冷却により水平方向は粒子数3×104 個の条件で6.4K、鉛直方向は104個の条件で2.1Kのビーム温度を達成している[16]。これは高速イオンビームに対してレーザー冷却により実証された横方向ビーム温度の最低値といえる。[1] S. Schröder et al., Phys. Rev. Lett., vol. 64, p. 2901, (1990).[2] J. S. Hangst et al., Phys. Rev. Lett., vol. 67, p. 1238, (1991).[3] H. J. Miesner et al., Phys. Rev. Lett., vol. 77, p. 623, (1996).[4] I. Lauer et al., Phys. Rev. Lett., vol. 81, p. 2052, (1998).[5] H. Okamoto, A. M. Sessler and D. Möhl, Phys. Rev. Lett., vol. 72, p. 3977, (1994).[6] H. Okamoto, Phys. Rev. E, vol. 50, p. 4982, (1994).[7] Y. Yuri and H. Okamoto, Phys. Rev. Lett., vol. 93, p. 204801, (2004).[8] A. Noda, M. Ikegami and T. Shirai, New J. Phys., vol. 8, no. 11, p. 288, (2006).[9] M. Ikegami, A. Noda, M. Tanabe, M. Grieser, and H. Okamoto, Phys. Rev. ST Accel. Beams, vol. 7, p. 120101, (2004).[10] H. Souda et al., Nucl. Instrum. Methods Phys. Res., Sect. A, vol. 597, p. 160, (2008).[11] 石川丈寛, 京都大学, 修士論文 Jan. (2008).[12] M. Tanabe et al., Appl. Phys. Express, vol. 1, p. 028001, (2008).[13] W. Petrich, et al., Phys. Rev. A, vol. 48, p. 2127, (1993).[14] M. Nakao et al., Phys. Rev. ST Accel. Beams, vol. 15, p. 110102, (2012).[15] H. Souda et al., Jpn. J. Appl. Phys. Vol. 52 p. 030202, (2013).[16] A. Noda et al., Proc. of IPAC 2014, Dresden, Germany, p28, (2014).
日本物理学会 第70回年次大会

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