会議発表用資料 分子イメージングによる認知症治療戦略の創世

島田, 斉

2015-04-02
内容記述
先進各国の中でも本邦は飛び抜けた高齢者大国であり, 人口高齢化を背景として認知症の罹患者数は増加の一途をたどっている. 平成26年の時点ですでに約500万人以上の認知症患者さんがおり, さらに認知症になる可能性がある, いわば予備群ともいうべき軽度認知機能障害患者さんも400万人以上いるとの推計もある. 国が掲げる健康長寿社会を実現するためには, 今後も増え続ける認知症の対策は不可欠である. 認知症の原因疾患としては, かつては最多であった脳血管性認知症にかわり, Alzheimer病(AD)に代表されるいわゆる変性性認知症の割合が増えてきている. 変性性認知症は, アミロイドβ(Aβ), 神経原線維変化などのタウタンパク病変(タウ), α-シヌクレインやTDP-43などの異常凝集蛋白の脳内蓄積に端を発する神経障害カスケードがその背景病態として想定されている. 疾患により蓄積する異常蓄積蛋白も, その結果として表れる臨床症状も異なり, 認知症は非常に多様な疾患であることが理解出来る. しかし現状の認知症治療は, 背景病態の多様性にも関わらず画一的となりがちであり, 今後は背景病態に基づく診断・治療を確立していくことが望まれる.分子イメージングは, 生体内における様々な分子プロセスを可視化する画像技術であり, 認知症における背景病態の理解や診断の深化にも寄与してきた. 特に脳内Aβ蓄積を可視化するアミロイドイメージングの実現により, ここ10年のADを中心とする認知症研究が, 過去に例を見ない早さで急速に進歩したことは周知の事実である. 一方, 認知症の根本治療に関しては, もっとも創薬研究が盛んに行われているADに関しても, まだ有効性が示された治療薬はない. 特にADの根本治療薬として期待されていたAβ標的薬の治験が相次いで”失敗”したのは記憶に新しい. Aβ標的薬が期待された進行抑制の効果を示さなかった原因としていくつかの要因が想定されているが, その一つがタウの影響である.タウはADにおいてはAβとならぶ二大病理変化の一つであるが, 非AD性認知症の多くでも, 主要な病理変化となっている. さらに, 近年タウはAβと同等以上に神経障害に密接に関与することを示唆する様々なエビデンスが蓄積されてきている. 既述のような理由から, タウを標的とする治療薬は, タウが介在するAD及び非AD性認知症の進行を止める根本治療薬となる可能性があり, 創薬研究における重要なターゲットとなっている. タウの標的治療薬を開発する上でも, 生体内のタウ蓄積を可視化する画像技術は, 創薬プロセスを加速する可能性を秘めた重要な技術であるが, 最近になりタウイメージングに関しても実用的な技術が登場し, 今後10年の認知症研究を力強く牽引し, 将来の認知症診療を改変するツールとなると期待されている. 本講演では過去の認知症分子イメージング研究の成果とタウイメージングが嘱望される背景について概説し, 最新のタウイメージングPET研究の成果を紹介しながら, 今後実現が期待される近未来の認知症治療戦略について考察する.
認知症の診断、早期治療のために

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