Departmental Bulletin Paper 発達障碍に対する精神療法ーその難しさはどこにあるのかー

小林, 隆児  ,  コバヤシ, リュウジ  ,  KOBAYASHI, RYUJI

12 ( 2 )  , pp.147 - 171 , 2017-02 , 西南学院大学学術研究所
ISSN:18803830
Description
これまで長い間、発達障碍の精神療法は困難で、ある意味禁忌ないし無効であるかのように信じられてきた。そこで筆者が実践している発達障碍の精神療法について、その基本的考え方となぜ多くの臨床家にとって難しいのか筆者の関係発達臨床の立場から以下のように論じた。①<患者-治療者>関係で立ち上がるもの(間主観での体験)に関係の特徴(問題)が端的に示されている。②そのことを面接でタイミングよく取り上げると、相手(母親や患者)はそれに気づくとともに、自分の過去(特に幼少期)が蘇ってくる。それは必ず自分の母親との「甘え」にまつわる体験で、自分の母親から認めてもらえなかったというアンビヴァレントな情動体験記憶である。③ここで治療者として大切なことは、「今の母子関係」と「過去の自分の母親との関係」という三世代にわたる連続性について自己理解が深まるように手を差し伸べながら話を紡いでいくことである。それは「過去の自分の母親との関係」での体験が「今の母子関係」に反映し、今の子どもの振る舞いとして表に現れるものである。④以上のことは治療者が意図的に、操作的に行うものではない。患者や母親が内省するなかでごく自然に「甘え」にまつわる体験が想起されるのである。子どもは母親のそうした変化をいち早く感じとり、驚くような反応で示してくれる。まさに「子どもは親の(こころの)鏡」だということができるのである。以上のごとき治療展開が起こるようになるためには、治療者が自らのアンビヴァレンスに気づき、それと同じこころの動きのゲシュタルトを患者との関係においても発見することができるようになることが不可欠である。他者理解は自己理解があって初めて可能になる。じつはこのことが臨床家であれ誰にとってももっとも難しいのである。
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