紀要論文 ドイツ基本法上の公債制限規定と連邦憲法裁判所2007年判決―議論の整理と論点の素描

石森, 久広  ,  イシモリ, ヒサヒロ  ,  ISHIMORI, HISAHIRO

48 ( 3・4 )  , pp.277 - 304 , 2016-03 , 西南学院大学学術研究所
ISSN:02863286
内容記述
基本法旧115条1項2文について1989年に連邦憲法裁判所の初めての判決が出されたのに続き,ドイツでは2007年7月にも,連邦の予算(2004年度連邦予算法律)の合憲性をめぐり,連邦憲法裁判所の判決が出された。背景には,2001年から2003年の予算年度において起債の増額が,さほど審議もされずに行われたことがあり,2004年度予算法律については,すでに立法段階から争いの徴候が現れていたという。当時の政権与党は,SPD,Bündnis 90/緑の党であった。この連立政権が,2004年度当初予算法律につき,全体予算2512億200万ユーロ,うち信用借入れ308億4000万ユーロ(投資支出は248億ユーロ)を提案したところ,野党から,起債の上限を超過していること等に関する批判を受けるなどして,結局,予算規模2573億ユーロ,信用借入れ293億ユーロ(投資支出は246億ユーロ)で議決されたのが2004年度連邦予算法律である。一方,これと並行し,当初予定された「Harz Ⅳ」改革を翌年度2005年1月1日に延期させることが決定され,当初予算が計画通り実現されないことが明らかとなった。政府はこれを受け,全体予算2556億ユーロ,借入授権437億ユーロとする2004年度補正予算法律を提案した。提案理由は,税収不足,銀行収入の大幅減,Harz Ⅳ改革の延期,そして,労働市場のなお十分でない状況,であった。これに対し,予算委員会は,借入授権を435億ユーロに減額する旨の勧告を決議し,連邦議会は,これを受けた形で2004年度補正予算を可決した。この435億ユーロの借入れ授権(補正予算法律により改正された2004年度予算法律2条1項)等に対し,野党であるCDU/CSU及びFDP会派の議員が,基本法,特に115条1項2文違反を主張して,規範統制を申し立てたのが本件である。連邦憲法裁判所は,まず,1989年の判決を参照しながら,当時示された判断基準から離れる理由はないことを述べ,憲法改正立法者による新規律の必要性の問題,基本法旧115条1項2文の投資,そして「全経済的均衡のかく乱の除去のため」という要件メルクマールについて具体的に判断を進め,結論として,申立てを認めなかった。基本法上の財政規律に関する司法判断は極めてまれであり,何がどう議論されるのかは,それ自体がわが国にとっては未知のものである。また,問題となった基本法旧115条1項2文は,2009年の基本法改正によって新しい債務制限規定に生まれ変わっている。2007年7月の判決は,当時進行中であった第2次連邦制度改革のさなかに出されており,時系列でみると,2007年判決がアピールした基本法改正に呼応した動きになっている。本稿は,この法廷意見の要旨〔Ⅰ〕,及び3人の裁判官により付された2 つの異なる意見( A b w e i c h e n d e M e i n u n g , 以下「特別意見 (Sondervotum)」という。)の要旨を振り返る〔Ⅱ〕。たしかに,事例そのものは,申立ては認容されておらず,何らかの財政規律が政府の財政活動を規制する効果を発したものとはなっていないが,しかし,これに付された2つの特別意見は,司法の場で起債制限規定をめぐる解釈のあり方に相違がありうることを示していることから,法廷意見との間でどのような議論がなされたのか整理し,この問題における法的論点を素描することを試みたい〔Ⅲ〕。
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