紀要論文 文化多様性条約における規範の多重性-途上国に対する「特恵待遇」の射程と意義-

小寺, 智史  ,  コデラ, サトシ  ,  KODERA, SATOSHI

48 ( 3・4 )  , pp.216 - 242 , 2016-03 , 西南学院大学学術研究所
ISSN:02863286
内容記述
近年、文化と国際法の関係について活発な議論が展開されている。それぞれの議論の射程や内容は論者によって異なるものの、現在の議論のなかには、従来の世界貿易機関(以下、WTO)における「貿易と文化」論を超える研究や、「国際文化法」または「文化の国際法」としての体系化の 傾向さえも見て取ることができるように思われる。文化と国際法に関する議論が活発化している理由として、国内及び国際関係において文化の重要性が増大していることはいうまでもないが、より 具体的な契機としては、「文化的表現の多様性の保護及び促進に関する条約(以下、文化多様性条約)」の存在を指摘することができる。同条約は、2005年10月20日に国連教育科学文化機関(以下、ユネスコ)の総会で採択され、2007年3月18日に発効した。日本は批准していないが、2015年9月30日現在、139か国及びEUが批准している。文化多様性条約については、諸外国をはじめ、日本においても多くの研究がなされており、同条約に対する関心の高さを窺い知ることができる。文化多様性条約は今後も批准国数を増加させ、世界の文化多様性を保護・促進するレジームの中核となることが予想されるが、その結果、同条約は様々に異なる事情を抱えた諸国から構成されることになるだろう。実際、現在も同条約には、その作成に大きな影響を与えたフランスなどの先進国から、国連が後発開発途上国として認定しているバングラディッシュといった国まで、多種多様な諸国が含まれている。「文化的表現の多様性の保護及び促進」(文化多様性条約1条(a))などの条約の趣旨及び目的を実現するためには、今後も、多様な状況にある諸国を可能な限り多く取り込む必要がある。条約の趣旨及び目的の実現のために多くの国家の参加を必要とする普遍性の要請は、文化多様性条約のみならず、すべての多数国間条約が直面するものである。それゆえ、この普遍性の要請を満たすために、これまで国際法・国際法学において様々な法技術が考案されてきた。そのひとつが「規範の多重性(pluralité des normes)」と呼ばれる法技術である。この技術は、国家をその属性に応じてカテゴリー化し、各国家群に異なる規範を適用することで多様な状況にある諸国の必要性を満たし、できる限り多くの国家の多数国間条約への参加を促すものである。現在、規範の多重性はほぼすべての多数国間条約に導入されており、開発問題に直面する現代国際法の特徴をなしている。本稿は、文化多様性条約における規範の多重性の発現形態を分析することで、文化多様性の保護・促進レジームにおける開発問題の位置づけ、及び同問題に対する国際法の機能及び役割を明らかにすることを目的とするものである。
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