紀要論文 甘えたくても甘えられない―関係臨床のコツ

小林, 隆児  ,  コバヤシ, リュウジ  ,  KOBAYASHI, RYUJI

11 ( 2 )  , pp.147 - 171 , 2016-03 , 西南学院大学学術研究所
ISSN:18803830
内容記述
本日、このような機会を与えていただいたので、私がこの四半世紀ずっと関心を抱き続けてきた「関係」について現在考えていることをお話させていただこうと思います。今でこそ発達障碍研究において「関係性」という用語は流行語のようにして誰もが使用していますが、それはごく最近のことでしかありません。時代は変わるものだと痛感させられます。ただ、巷で使用されている「関係性」と私が考えているそれとでは全くと言っていいほど意味は異なっています。まずは私自身のことを少し振り返ってみます。私が最初に「関係性」なる用語を使って論文を公に発表したのは1996年で、今から20年ほど前のことでした。当時私は「関係」を軸に観察と臨床を実践する母子ユニット(Mother−Infant Unit:以下MIU)を創設して臨床研究を開始し、以後14年間(1994.4.-2008.3.)にわたって知見を蓄積してきました。しかし、当初学会で発表すると、ある人物から決まったように母原病の再来であるとのひどいバッシングを受けていました。今思い返してもそれが学問の世界で行なわれることなのかと思われるほどの信じがたい仕打ちでしたが、それ以上に恐ろしいと思われたのは、そうしたバッシングに対して会場にいた聴衆誰一人として私を擁護する者がいなかったことです。それでも私はひるむことなく黙々と臨床活動を継続し、研究者としてなんとか今日まで生き延びることができました。MIU の活動は毎週金曜日のみでしたが、それでも実数81組の母子に出会って治療的関わりを持ったことになります。その中から新奇場面法(Strange Situation Procedure:以下SSP)を用いて母子の「関係」評価を実施できた事例のみ55組を対象に、録画ビデオを繰り返し見直しながら、その関係の特徴を抽出して纏めたのが、昨年(2014)2月に上梓した『「関係」からみる乳幼児期の自閉症スペクトラム』(ミネルヴァ書房)です。大変な難産の末に生まれた本ですが、その最大の理由は単に事例の多さではなく、関係の観察と記述にまつわる困難さでした。しかし、その苦労の甲斐あって本書を纏める過程で、私が確かな手応えとしてつかんだものは少なくありません。
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http://repository.seinan-gu.ac.jp/bitstream/123456789/1239/1/hs-n11v2-p147-171-kob.pdf

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