紀要論文 異文化に暮らす日本人妻の適応と社会的ネットワークの意義 ―台湾なでしこ会を事例として―

片山, 怜  ,  カタヤマ, レイ  ,  KATAYAMA, Rei

1pp.171 - 180 , 2015-08 , 西南学院大学大学院
ISSN:21895481
内容記述
近年、国際結婚の増加にともない、日本から配偶者の国である海外へと移住する日本人が増えている。中でも、女性の移動の方が男性より多い。1990年頃から、国外における日本人男性の国際結婚が減少しているのに対し、同時期における日本人女性の国際結婚は、逆に増えているのが現状である。本稿では、台湾に住む日本人妻を研究対象とし、日本人女性が台湾人男性との結婚に至るプロセスとそのメカニズムを解明するとともに、異文化に暮らす日本人妻たちが、いかにしてホスト社会に適応しているかについて考察する。本研究の主な目的は、異文化間で結婚し、外国に移住する日本人女性の「出会い」のパターンと台湾において日本人妻たちが自ら築き上げてきた社会的ネットワークを解明することで、日本人女性の海外での活躍及び異文化適応のプロセスを理解するとともに、日本と台湾双方の文化の違いや社会の変動によって変化していく国際結婚のあり方を模索することである。異なる文化の中に住む人々とともに生きていく日本人女性にとって、自分のアイデンティティを維持しながら、異文化にうまく適応していくためには、自分たちの社会的ネットワークを組織する必要があった。この社会的ネットワークの実態を解明することは、異文化で生活する人々の適応過程から問題点を見出すことができ、ひいては、民族間の摩擦や対立、偏見の問題に新しい視点を提供できることが期待できる。研究対象の国際結婚相手国に台湾を選んだのは以下の理由による。台湾の高度成長と国際化に伴い、日本と台湾の交流が盛んにおこなわれるようになった。1980年代後半から、台湾では民主化が進展し、1987年に戒厳令が解除されたが、それから一気に台湾における日本ブームが到来した。まず、1990年代には民主体制が確立され、1993年に日本語及び日本のテレビ番組の放送が解禁になったのに続いて、映画、雑誌、キャラクターグッズなど日本のモノが大量に輸入されるようになった。こうして日本製品が出回る中で日本語ブームが起き、台湾各地で「地球村」、「世界村」、「科見」、「永漢」などといった日本語補習班ができたほか、台湾の大学でも相次いで日本語学科が新設されるようになった。また、こうした趨勢のなかで、日本に留学する台湾人が増え、一方で、台湾での日本語教育の需要の高まりと共に、台湾で日本語教師として働く日本人も増加している。また、台湾では、台湾に居住する日本人妻が自ら組織した日本人妻の親睦会が各地にいくつも存在し、その会員数が増えている。これは、夫台湾人・妻日本人のカップルが増加していることを意味する。1975年に日本人妻の親睦会「なでしこ会」が台北に発足したのを皮切りに、台中には「桜会」、台南には「南風」、高雄には「ひまわり会」と台湾各地に次々と日本人妻の会が発足している。その他にも、国際結婚家庭の居留環境の改善を目的に活動している「居留問題を考える会」や母親になった日本人女性のための母乳の会である「ねねの会」など、国際結婚し、母国ではない国で暮らすことになった日本人妻のよりどころとなる様々な組織が存在するのである。これだけ多くの組織を発足させたということは、国際結婚した日本人女性が増えているということ、そして、これから先も増え続けるであろうということを示唆している。本稿では、日台間の人的移動に関する日本と台湾の政府統計データ、新聞雑誌記事の分析に加え、(1)今回筆者が行った台湾人男性と国際結婚をした日本人女性のライフヒストリーの聞き取り調査、及び(2)在台日本人妻の会「なでしこ会」での参与観察によって得た資料などの分析をもとに、台湾に居住する日本人妻の異文化適応における新たな展開について考察する。
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http://repository.seinan-gu.ac.jp/bitstream/123456789/1228/1/gs-n1-p171-180-kat.pdf

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