Departmental Bulletin Paper アランフェスの文化的景観に関する研究

関根 理恵

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 本論文の目的は,第一に,1990 年代初頭から活発的になった文化的景観保護の国際的動向について,歴史的経緯を明らかにすることである。第二に,文化的景観の保護および運用方法の現状について考察することである。そこで本研究では,『アランフェスの文化的景観(2001)』を研究対象として取り上げ,事例研究を行った。 研究の結果,以下の点が明らかになった。\n① 1990 年代からはじまったといわれている「文化的景観」の保護は,実際には,1992 年の第16 回世界遺産委員会(サンタフェ・アメリカ)以前より始まっており,自然遺産の登録基準の再考とともに,オペレーショナルガイドラインの改定がきっかけとなっていた。その背景には,現状の登録基準では適正評価が難しい遺産への対応策が模索され,「景観の保護」,そして「自然と人間との関わりの所産」についての価値づけから派生したものであった。②「世界遺産登録リストにおける不均衡の是正及び真正性および完全性の確保のための世界戦略」 が採択された 。これにより,世界遺産登録リストの作成方法として,テーマ別の研究が提唱され ,その後の条約加盟国における暫定リストおよび当該専門機関における活動に影響を与え,その結果,新しい文化遺産の枠組みである「文化的景観」の登録が1994 年以後,急増した。③生物多様性に関する国際条約(CBD・1992) ,食料及び農業のための植物遺伝資源に関する国際条約(2001) と世界遺産条約の国際条約間の連携 ,および「持続可能な開発に向けての国連長期計画」に基づいた「自然と人間との関わり」「農業」といった新しい観点による価値基準の創出の結果,「文化的景観」が注目されるようになった。④アランフェスは, 新しく文化遺産に導入されたCultural Landscape として, 新規に登録され, その中には, 登録リストの偏りを是正するために提案された「土地の人間の共存(Human Coexistence with the Land)」のテーマに基づいた「自給持続(Modes of subsistence)」と「技術の進化(Technological evolution)」の内容が反映された遺産登録であった。⑤文化的景観および運用方法では,文化的景観であっても,遺産の構成要素を個別に保護することから,通常の歴史的建造物や,旧市街などの保存および活用方法と同様の政策を設定し,施策・措置の内容も同様に実施することにより管理できる。⑥文化的景観では,バッファーゾーンの範囲設定が困難であり,境界線を明確に示すことができない。⑦「アランフェスの文化的景観」の場合,保護および管理において,独自の管理システムの構築によって,統轄管理が実施できている。その要因は,国,地方自治体,その他関連機関同士の連携である。
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