Departmental Bulletin Paper 近世初期におけるもっとも古いスペイン通史について(その1 ) ―チュルケ・ド・マイエルヌの『スペイン総史』―

高橋 薫

(第86号)  , pp.1 - 34 , 2017-09-30
ISSN:0287-3877
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 ルネサンス期を境にして,「国家」という体裁を有する国家はそれぞれに,おのれのアイデンティティーを他国や自国民に発するため,自国史の編纂をすすめた。フランスはその代表だが,都市国家にまで枠を広げると,数点のフィレンツェ史もその例であり,英国もドイツ各邦もその例にもれない。しかしながら,西欧16世紀から近世初期にかけてフランスとならぶ軍事大国であったスペインの反応は鈍かった。これはレコンキスタまでイスラム教支配下に置かれていた影響もあって,記すべき古代史を有さなかったからだと思われる。しかしながら17世紀初頭,イエズス会士のファン・マリアナはスペイン人として初めて,断片的・もしくは局所的でないスペイン通史をラテン語で上梓し,たちまちスペイン語訳され,英訳版も数十年を経ずして翻訳された。しかし実はマリアナのスペイン通史は近世初期にあって初めての「スペイン通史」ではなかったのである。マリアナに先行することわずか,リヨン改革派の牧師,ルイ・チュルケ・ド・マイエルヌがマリアナ以上に大部な「スペイン総史」を発表していた。しかもこの総史は高く評価され,マリアナと同じく英訳本も刊行されている。本稿はチュルケの「スペイン総史」をわが国で(いや,おそらく現代の西欧史家の中でも)初めて紹介するとともに,いくつかの視点からそのオリジナリティーを本場スペインのマリアナの通史と比較対照しながらさぐるものとする。なお緻密な作業で紙幅が嵩むため,数回の分載を予定している。
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http://ir.c.chuo-u.ac.jp/repository/search/binary/p/10700/s/9623/

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