Departmental Bulletin Paper 「文明/未開」と「原典/翻案」 ―坪内逍遥の宇田川文海評価と日本のシェイクスピア受容―

近藤 弘幸

(第88号)  , pp.29 - 49 , 2017-09-30
ISSN:0287-3877
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 宇田川文海は、『何桜彼桜銭世中』の作者として、その名前だけがシェイクスピア研究者に記憶されている存在である。当時の文壇に君臨した人気作家であったにもかかわらず、彼が『何桜彼桜銭世中』以外にもシェイクスピア物を残したことは、ほとんど知られていない。その背景には、ほぼ同時代に日本におけるシェイクスピア受容・研究の泰斗としての地位を築いていった坪内逍遥の〈原典原理主義〉とも言うべき態度の影響があったものと思われる。逍遥にとって、文海が活躍した大阪は未開の地であり、文海の仕事は旧幕時代の残滓でしかなかった。そして逍遥の存在があまりに巨大であるがゆえに、文海の仕事は、今まで真剣に顧みられることがなかったのである。しかし彼もまた、まぎれもなく「日本のシェイクスピア」の一部を構成している。私たちは、そろそろ逍遥的パラダイムを脱し、文海のような人々に光を当ててもいいのではないだろうか。
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