Departmental Bulletin Paper 宮沢俊義の正義論―ケルゼンの法理論を手がかりとして―

長尾 一紘

第122巻 ( 第1・2号 )  , pp.639 - 686 , 2015-08-03
ISSN:0009-6296
Description
 宮沢俊義の法学研究は、憲法解釈の分野と法哲学の分野に二分される。法哲学の分野について、宮沢がとくに関心を示したのは、法学の方法論と正義論である。本稿は、このうち後者を検討の対象とする。 正義論について、宮沢はケルゼンの立場への強い支持を表明しながら、その所論の内容は、むしろケルゼンの立場の対極にあった。このような不整合は、何を意味するのであろうか。 宮沢には、「自然法は存在しない」という理論上の認識と、「自然法によって日本国憲法の正当性を基礎づけたい」という実践上の意欲が並存していた。認識と意欲の間には深い断層があり、これを認識論のレベルで両立させることは不可能であった。 宮沢が生きた二〇世紀の前半は、戦争と革命の時代であった。体制の変動によって、各国の正義論はしばしば交替をよぎなくされた。宮沢の法理論にはかぎりなく不透明な部分がみられ、また度重なる学説の動揺がみられる。その根底には、正義論の混迷があったのではないかと思われる。 宮沢の法理論は、戦後憲法学の主流を形成してきた。したがって、宮沢の法理論を検討することは、戦後憲法学の検討を意味する。さらにいえば、それは現在の憲法学を再検討するさいの、不可欠の前提でもある。
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http://ir.c.chuo-u.ac.jp/repository/search/binary/p/9682/s/8182/

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