紀要論文 過失犯の処罰限定論について

山本 紘之

(第121巻/第11・12号)  , pp.123 - 146 , 2015-03-16
ISSN:0009-6296
内容記述
 近時、医療過誤を中心として、過失犯の処罰範囲を限定すべきか否かが議論されている。たとえば、医療過誤に対する過度の刑事処罰は、いわゆる防御的医療を招くおそれがあるから、刑事司法の介入は重大な過失によるものに限るべきであるといった議論がそれである。その背景として、医療者からの刑事司法への不信を指摘することもできよう。その一方で、そうした議論は医療従事者の「特権」につながるといった疑念や、そもそも従来の医療過誤に対する処罰がすでに、そのような「限定」を考慮してきたという指摘もなされている。これらの議論を一瞥すると、過失犯の処罰範囲に関する議論は、一度、整理しなおす必要があるように思われる。本稿はこうした問題意識の下、過失犯の処罰限定論について再検討するものである。本稿の見解によれば、過失犯の処罰を限定する論拠として正当性を有するものは、事実上回避不可能であった過誤をも処罰するおそれがあるという点と、刑法上要求される回避措置の不明確性ゆえに萎縮効果を招きうるという二点である。論拠がこの二点だとすれば、必要なことは、実体法の改正ではない。そうではなくて、回避可能性という実体法上の要件を適切に認定するための制度を整えることと、刑法上要求される回避措置の透明性を高めることだとするものである。
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http://ir.c.chuo-u.ac.jp/repository/search/binary/p/8720/s/6863/

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