Departmental Bulletin Paper 詐欺罪における形式的個別財産説の理論的構造

長井 圓

(第121巻/第11・12号)  , pp.359 - 395 , 2015-03-16
ISSN:0009-6296
Description
 本稿は、窃盗罪と詐欺罪とを等置する旧刑法由来の形式的個別財産説を論拠づけ、その限定化を試みる。「個人の属性」の詐欺事犯に関する最近の判例は、これを抑止すべき訴追裁量に対応したもので、これを法益保護の観点からでは排斥しえない。その限定を志向する実質的個別財産説は、法規定で排斥された全体財産説を裏から取り込む点で背理に至る。全体財産説では、債務負担のみでも財産損害が成立しうるばかりか、一方的給付(乞食詐欺)の処罰根拠にも難が生じるので、これを採用する余地はない。財産の所有・占有は常に個人の自律・選好により成される。これを国家・社会の観点から定める客観的財産説は、自由主義に反する。財産は生命・身体・自由等の法益保全に用いられ、その個人の目的実現を尊重しない法解釈(錯誤・同意論)は不当である(人格的財産概念)。そもそも欺罔の手段として給付される「相当な対価」は不法原因給付の法理からして、不法領得額から控除されず、財産損害を否定する根拠となりえない。しかし、個人の生存を脅かす程に広く「個人の属性」の秘匿に欺罔の成立を認めることは、共存の法理から制約を受けざるをえない。
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http://ir.c.chuo-u.ac.jp/repository/search/binary/p/8651/s/6871/

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