Departmental Bulletin Paper 名誉毀損罪における事実の真実性の錯誤

中村 邦義

(第121巻/第11・12号)  , pp.309 - 340 , 2015-03-16
ISSN:0009-6296
Description
 本稿は、名誉毀損罪における事実の真実性の錯誤の問題について、表現の自由や挙証責任の転換、誤想防衛との関係などを踏まえつつ検討している。よく知られているように、夕刊和歌山時事事件の最高裁判例は、真実性の錯誤が、行為時に客観的に確実な資料・根拠に基づく場合にのみ故意を阻却するとした。そして、それは、社会一般の人々の法的な直感に合うものとして広く受け入れられ、この結論をいかにして基礎づけるかということが多くの学説によって腐心されてきたように思われる。本稿は、刑法二三〇条の二の規定を踏まえると、裁判時に被告人に挙証責任が転換される真実性の証明は、処罰条件と解するほかはなく、表現の自由の保障の観点から、行為時に相当な資料・根拠に基づく言論は、許された危険として、刑法三五条に基づく違法性阻却を認める立場を支持した。そのうえで、これまでみられなかった錯誤論の比較的新しい見解なども応用しつつ、判例理論の基礎づけを模索してみたが、錯誤論の基本に立ち返って考えると、判例の結論は理論的に基礎づけうるものではなく、行為者が誤認した内容が仮に現実に存在したとすれば相当な資料・根拠にあたるといえる場合には、客観的には相当な資料・根拠はなくとも、故意責任が阻却され、処罰することはできないとすべきことになると主張するものである。
Full-Text

http://ir.c.chuo-u.ac.jp/repository/search/binary/p/8649/s/6869/

Number of accesses :  

Other information