紀要論文 1800年の幻想ミステリ― イグナーツ・フェルディナント・アルノルトの二つの作品について―

亀井 伸治

(82)  , pp.105 - 134 , 2015-10-30
ISSN:0287-3877
内容記述
ドイツ語圏のゴシック小説たる〈恐シャウアーロマーン怖小説〉は,英国のゴシック小説と同じく,超自然を扱うにあたって二つの形式を用いた。すなわち,神秘を物語の中では「本当」と設定するか,それとも,最後にそこに何らかの合理的説明を与えるかである。十八世紀末ドイツの代表的な恐怖小説作家イグナーツ・フェルディナント・アルノルト(1774-1812)が1800年に上梓した二つの作品『血の染みのある肖像画』と『分身のいるウルスラ会修道女』は共に,幾つもの超自然現象を描き出しているが,それらは結局、犯罪的な企みの人為的仕掛けによるものと説明されて終わる。この点において,両作は,上の二つの形式の内の後者の型に分類することができる。ただ,どちらの作品もその解明部分に曖昧さがあり,理性的姿勢は不完全な印象を与える。そこには,理性の世紀における啓蒙主義の合理と反啓蒙主義の非合理の拮抗の反映が認められる。そしてそれ,この二作品を,合理的解決と並行して超自然的解決の可能性を導入する現代の〈幻想的ミステリ〉ジャンルへと近づけてもいる。
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