Departmental Bulletin Paper 語ることを介した喪失との対峙 ― The Good Soldierにおけるダウアルの語る行為をめぐって―

板谷 洋一郎

(82)  , pp.29 - 51 , 2015-10-30
ISSN:0287-3877
Description
本稿は,ジョン・H・ハーヴェイ(John H. Harvey)が深刻な喪失に対峙するための手段として提唱する「解釈作り」の概念に照らしながら,フォード・マドックス・フォード(Ford Madox Ford)作『よき兵士』(The Good Soldier)における語り手ダウアル(Dowell)の語りは,重大な喪失を経験した者が悲嘆に言葉を与え一つの物語にすることで,喪失を生き延びた自分に降りかかった危機に向き合おうとする行為として読めることを論じるものである。ダウアルが,彼が被った喪失の中でも,とりわけエドワード・アシュバーナム(EdwardAshburnham)大尉の喪失に伴う悲嘆に直面しているとし,彼の語る物語を「解釈作り」とみなすうえで,特に焦点をおきたいのは,彼の語りにおける(想像上の)聞き手の存在,彼が語りを通じて立ち戻る精神的麻痺や強迫的回帰といった状態は,喪失を経験した者が「解釈作り」を通じて自己の再構成を試みる過程で経る局面である可能性,そして最終第IV 部第IV 章と第V 章の間に長い語りの空白があることは,再開される語りの内容がダウアルにとって最も精神的負担を伴うことを示唆する点である。
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http://ir.c.chuo-u.ac.jp/repository/search/binary/p/8277/s/6420/

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