紀要論文 《繁栄》イメージから精錬するコンセプトに基づく絵画表現の追求

杉本, 祐太

(9)  , pp.163 - 169 , 2016
ISSN:1883-9568
内容記述
絵画の表現は、今日先人達の発見や試みにより様々なものが表現されてきた。私は以前、抽象表現がとても好きであったが、制作を行い他の表現や様式、それに伴う技術的な要素を調べていくうちに、自分の好きな表現の幅が広がっていった。そして、興味を覚えたものに対してはその表現を自分の表現に取り入れる試みをくり返すことで、徐々に表現の幅が広がっていっているのが現状である。私は以前、抽象的な絵画と半具象的な絵画を制作してきた。私が2014年に制作した作品である《形態形成》(図2)は、黒い背景に小さく単純な色と形のものが沢山集まることで複雑な全体像となる抽象表現主義的絵画を制作した。平面的なマチエール、原色、平面的な形、複雑な形、意味を成し得るような形、体系的という私の好きな要素だけを抽象的に入れ込んだ絵画である。現実世界には存在しないものがとても好きで、それが表現できることにとても幸せを感じていた。2013年に制作した作品である《彷徨う》(図3)は現実のものを自分が受けた印象をベースとした色や形で表現した作品である。それまで絵画制作や私生活で答えを求め探し続けてきた自分自身がテーマとなり、夜に人に頭から布を被せたような人が沢山行き交う街の交差点を描いた。つまり、対峙した対象を捉えることにより自分が伝えたいメッセージを表現するということに魅力を感じてこのような表現に至った。しかし、最近は具像表現にとても興味がある。2015年の《午後の晴好》(図4)では、高架下の道に犬が座っていて、その道の脇にある土の部分に花や雑草が生えている何気ない日常を描いた。多少色や形が省略、変色・変形されている部分があるがこれまでの表現よりもモチーフに実感をもって描き表現することを目指した。私は抽象あるいは具象を問わず、絵画がその画面の中に持っている力とも言うべき「雰囲気」が大好きである。そのために、これからは私自身の変化と共にそのときどきに興味を持った事象を表現し、その表現の試行錯誤の中で多くの取捨選択をし、最もイメージに合った方法で1枚の絵画を描きたいと思っている。こうすることによって、私の創作欲求を満たしていけるのではないかと考えている。表現・技術にはそれぞれ表現するにあたり得意不得意があり、表現・技術を駆使するにあたりそれらの長所をどれだけ生かせられるかを考える必要が出てくる。効果的に表現や技術を駆使することによって相乗効果が働き、より良い作品になりうると私は考えている。そのためにはその表現の良さを十二分に把握し、自分が描きたいイメージの方向に沿う表現の取捨選択をしていかなければならない。この取捨選択に必要となるのが、制作するにあたって方向性を示す、いわば方位磁石の役割を果たすコンセプトである。私は絵画を制作するとき、これから何を描くか決める初めの段階で、頭の中に思い描くイメージがある。それを完成に近づけるためにコンセプトを用いて絵画制作を行っている。そのコンセプトに沿った表現方法や技法を含めた制作過程を踏むことで、自分の描いたイメージにとても近い表現をすることができるのである。そしてそのコンセプトによって初めて必要なものがわかる場合もあるのである。このコンセプトの設定はとても重要で、間違えた設定にすると自分の意に全く沿わないものになってしまう。そのため、そのときのイメージに合ったコンセプトを設定しないといけないのだが、イメージがはっきりしていない状態でイメージに合うコンセプトを設定するのはとても困難であるため、コンセプトを設定し自分のイメージに合うかどうかの確認をして、合わなければまたコンセプトを設定し直してイメージと確認するという作業をイメージと合うまで取らなければならない。この精錬を通したコンセプトに基づき制作を行っていくことで、自分のイメージに沿った表現が実現しやすくなるのである。いつも定まった表現を行っている人は、コンセプトが似通っているため毎回設定する必要はないが、私は毎回違った表現の絵を描くために完成の到達点が変わる。この時に初めてその表現を行う場合、行うべき行動や表現がはっきりしないことがよくあるため、私はコンセプトに基づく創作を追究することで、より客観的に作品を分析し適切な表現を行いたいと考えた。以上が、私が表現にコンセプトを使用する理由である。以降では、今回制作した作品《繁栄》がイメージから精錬するコンセプトに基づいて絵画表現を行うころで具体的に制作にどう影響があるのか、また、どうやって今回の制作作品《繁栄》のコンセプトをイメージから精錬したのかを述べていきたい。
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