Departmental Bulletin Paper <研究論文>キリスト教におけるインクルージョン研究:ルカ神学における障害理解

鈴木, 文治

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聖書には多くの障害者や病人が登場する。旧約時代また新約時代には,障害がどのように考えられ,また障害者がどのように位置づけられたかが様々に記載されている。特に,イエス・キリストによる障害や病人の癒やしの物語は,福音書や使徒言行録に多く記載されている。様々な障害や病気のある人たちがイエスの身近に存在し,彼らを癒やし,救いに入れた記事は,福音書全体で多くの分量を占め,イエスの宣教と並んで,福音の中心的な使信となっている。この物語をどのように理解すべきか。キリスト教史の中でもその使信の解釈を巡って,様々な角度から検討されてきた。私は,障害や病気の癒やしという奇跡物語そのものよりも,イエスの間近に多くの障害者や病人がいたということ,否,イエスはそのような人たちの間にいつもいたという事柄を重視して,イエスにおけるインクルージョンの問題を,ルカ神学を中心に取り上げてみたい。ルカは医師であり,ギリシャ人であったことが知られているが,医師としての立場から見る障害者や病人は,単に事実の把握ということに留まらず,共感的・受容的に描かれている。また,ギリシャ人という出自は,ユダヤ人の多い初代キリスト教会にあって,選民思想の強い集団の中で異彩を放っている。福音のグローバリズムや,また排除される側の視点を絶えず持ち,インクルージョンの理念を持っていた人物である。このようなルカの神学における「インクルージョン」思想を明らかにすることが,本論の趣旨である。それは,福音書や使徒言行録に示されている「排除されている人たち」を本質的には教会の宣教の対象としてこなかった現代のキリスト教会のあり方への批判,そして今後の方向性への示唆になると思われるからである。
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