Departmental Bulletin Paper 保安処分に対する「日本精神医学ソーシャル・ワーカー協会」(現日本精神保健福祉士協会)の「対抗」と「変節」の過程
A process of changes in statuses of Japanese Association of Psychiatric Social Workers towards the Security Measures
ホアン ショブン ニ タイスル「ニホン センシン イガク ソーシャル・ワーカー キョウカイ」(ゲン ニホン セイシン ホケン フクシ キョウカイ)ノ「タイコウ」ト「ヘンセツ」ノ カテイ

樋澤 , 吉彦

Description
本稿は、日本における保安処分制度成立の機運に対して少なくとも1980年代までは反対の立場を堅持してきた精神保健福祉分野におけるソーシャルワーカー(PSW)の職能団体である「日本精神医学ソーシャル・ワーカー協会」(現日本精神保健福祉士協会(PSW協会))が、その構造的類似性から一種の保安処分と同定できる「心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者の医療及び観察等に関する法律(医療観察法)」(2003(平成15)年7月成立)に対して実質的且つ積極的に関与を表明するに至った過程を、「対抗」と「変節」の過程と規定して整理検討することを目的としている。日本では戦前から戦後にかけて幾度となく刑法改正に基づく保安処分導入が検討されてきたが、1961(昭和36)年の「改正刑法準備草案」とそれに続く1974(昭和49)年の「改正刑法草案」以降は、保安処分の主眼が「社会防衛」志向に基づく「触法精神障害者」の「治療」に収斂されたこともあり、日本精神神経学会をはじめとして種々の職能団体等の強固な反対運動を惹起させた。PSW協会も1970年代から80年代にかけて「精神障害者の社会的復権と福祉」を自らの「使命」として標榜しながら保安処分成立機運に対して強固な反対運動を繰り広げた。しかしその約20年後、PSW協会は同様の「使命」を根拠として医療観察法に対してその制度検討過程から積極的に関与し、結果として同法における「精神保健参与員」及び「社会復帰調整官」の2つの役割の職務要件を「獲得」した。経緯の表層を追うかぎり、2001(平成13)年に発生した精神障害を「詐称」していた者による事件を契機として、PSW協会は保安処分に対し「対抗」から「加担」へと「変節」したかのように見える。しかしPSW協会による医療観察法への積極的関与は唐突なことではなかった。PSW協会は、1981(昭和56)年に日本弁護士連合会がPSWも職務要件として明記したうえで保安処分案の「対案」として発表したものの、各方面からそれ自体に内在していた保安処分的性質に対して批判が相次いだ「精神医療の抜本的改善について(要綱案)」に対しては曖昧な態度を取った。このことは、PSW協会が1980年代に保安処分に反対の立場を明確にしていた時期から、他方において自らの「職域拡大」の好機であれば保安処分性の強い制度であっても、PSWの「使命」を補助線として活用することにより積極的に関与する姿勢を示していたことを示している。
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