学位論文 インプラントのチタン製アバットメントスクリューの破折危険因子に関する検討
Study of risk factors of the abutment screw fracture of titanium dental implant

安東, 史子  ,  中村, 典正  ,  新村, 弘子  ,  永澤, 栄  ,  川原, 一郎  ,  岡藤, 範正  ,  安東, 信行  ,  土屋, 総一郎  ,  松山, 雄喜  ,  岡﨑, 耕典  ,  黒岩, 昭弘  ,  Ando, Ayako  ,  Nakamura, Norimasa  ,  Niimura, Hiroko  ,  Nagasawa, Sakae  ,  Kawahara, Ichiro  ,  Okafuji, Norimasa  ,  Ando, Nobuyuki  ,  Tsuchiya, Souichiro  ,  Matsuyama, Yuuki  ,  Okazaki, Kousuke  ,  Kuroiwa, Akihiro

35 ( 1-2 )  , pp.20 - 30 , 2015-04
ISSN:1346-8111
NII書誌ID(NCID):AA11582107
内容記述
【目的】チタン製インプラントは今日では欠損補綴治療の1つとして,信頼され普及し取り入れられてきている.インプラント治療は,プラークコントロールや咬合調整等の定期的なメインテナンスの継続が長期安定につながると考えられているが,長期間の使用に伴い偶発症が報告されている.申請者らは,上部構造装着後5年経過したインプラント補綴装置におけるアバットメントスクリューの頭部と首部の間での破折を経験した.アバットメントスクリュー破折の原因として,上部構造の適合不良,スクリューの緩みによる可動性の発現,強い咬合力などが考えられるとの報告はあるが詳細な原因について客観的に確証されていない.またインプラントが存在する口腔内環境は,常に唾液に囲まれており飲食物によって温度やpH が変動することによる腐食の可能性も考えられるが,その関連性も明らかではない.そこで申請者らは,チタン合金製アバットメントスクリュー破折の原因および詳細な物理的因子や環境因子について,破折したアバットメントスクリュー破断面の観察,三次元非線形有限要素法による応力解析,および口腔内環境に類似させた腐食反応実験を行った.【材料と方法】1.破断面の観察および元素分析:走査型電子顕微鏡を用いてアバットメントスクリューの破断面のSEM 画像の観察とエネルギー分散型X 線分析(EDS)による元素分析を行った.2.三次元非線形有限要素法による応力解析:破折インプラントと同一のインプラントを樹脂包埋し正中線にて切断し寸法を測定して解析モデルを作製した.解析にはANSYSVer.13 を使用して非線形解析を行った.3.口腔内類似環境下における腐食反応:アバットメントスクリューと同じ組成である,Ti-6Al-4V のチタン合金板に耐力相当の曲げ応力を負荷し,Na2SO4 水溶液,生理的食塩水に浸漬し37℃恒温槽内において腐食試験を行った.標準試料として無負荷板のNa2SO4 水溶液の浸漬も行った.1 週間,2 週間,3 週間,4 週間浸漬後の試験片のSEM 観察とEDS による元素分析を行った.【結果】1.破断面の観察および元素分析:破断面には腐食孔と疲労破壊の様相が認められ,表面にはS などの付着物が検出された.2.三次元非線形有限要素法による応力解析:インプラントの上部構造物辺縁隆線部に垂直方向へ応力を負荷させた場合に,アバットメントスクリュー破折部位と同一部位に応力集中が認められた.3.口腔内類似環境下における腐食反応:すべての試験片で孔食などの腐食所見はみられなかった.浸漬4週間後の応力を負荷した試験片中央部と端部には,膜状の付着物が観察されたがS は検出されなかった.【考察】本症例は天然歯である下顎左側第1小臼歯が頬側に転位しており,下顎左側第2小臼歯の咬合面近心頬側にファセッテが認められる.これらのことから,左側側方運動時に下顎左側第2小臼歯に過度に咬合力の負担が繰り返し負荷され破折に至ったと考えられる.破折したアバットメントスクリューの破断面に孔食が見られ,またEDS 分析でSが存在した.三次元非線形有限要素解析の結果は,上部構造物の辺縁隆線部に垂直方向へ応力を負荷させた場合,アバットメントスクリュー頭部への応力が集中することが明らかになり、これが破折の原因と考えられた.また本症例で使用しているアバットメントスクリューの座面部の形状は,頭部の下丸みと呼ばれる形状が付与されておらず,応力が集中しやすい形となっており,その形態も破折原因の一つであると考えられた.本研究の腐食実験では,明らかな孔食および応力腐食割れ所見はなく,S も検出されなかったことより、破折面の孔食原因は硫化物によるものと予想されたが,その原因を特定することはできなかった.応力腐食割れが起こるための条件は「材料」・「環境」・「応力」の三要素が重複する特定の条件で発生することより,本腐食実験ではこの三要素の特定の条件が揃わなかったのではないかと考え、腐食については今後さらなる検討が必要であるとしている.
2014
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