Technical Report 月の地下空洞内における水分子の熱的飛行挙動: その1
Thermal flight behavior of water molecule in lunar caverns (I)

齋藤, 優里  ,  櫛田, 果鈴  ,  春山, 純一  ,  Saito, Yuri  ,  Kushida, Karin  ,  Haruyama, Junichi

JAXA-RM-16-009pp.1 - 8 , 2017-03-27 , 宇宙航空研究開発機構(JAXA) , Japan Aerospace Exploration Agency (JAXA)
ISSN:1349-1121
NCID:AA11983593
Description
月の縦孔の底では, 底の砂に含まれる酸素と, 縦孔底に打ち込まれた太陽風起源の水素イオンとが結合して水分子が生成される可能性がある. 生成された水分子は, 熱速度をもって, 縦孔外へと脱出してしまうと考えられるが, 縦孔の底に水平方向奥へと広がる地下空洞が存在する場合, 空洞奥へと水は熱速度をもって飛行拡散し, 地下空洞内においてある程度の時間滞在する可能性がある. そこで, 本稿では, 月最大級の「静の海の縦孔」(8. 3N, 33. 2E, 空洞の床から天井までの高さは60m, 空洞内の温度は-20度C)を念頭に, その底で生成された水分子が, 縦孔の底に続いていると予想される地下空洞内において, どのように熱的飛行の挙動を示すのかを, 数値シミ ュレーションにより検討した結果を報告する. 今回は, 初期的な検討として, 水分子が飛行する地下空洞を, 地下方向(深さ方向)とそれに垂直な方向(奥行き方向)の長方形に簡素化し, そのちょうど中間の天井に一部(縦)孔が開いている構造を仮定している. 地下空洞の実際の奥行は判明していないため, 今回は奥行を0.5kmと10kmと設定した. 縦孔底真ん中で生成された水分子は, その場の温度(-20度C)に相当する熱速度を得て, 乱数で与えられた角度で飛び出し, (ほぼ)直線飛行の後, 地下空洞内の天井または奥壁において衝突停止する. そして再びその場での熱速度を得て, 直線飛行後, 再び地下空洞の床あるいは奥壁に到達衝突停止, という振る舞いを繰り返し, 最終的には, 縦孔から脱出する. 本研究では, 水分子の縦孔直下の床での生成から, 脱出にかかる時間を, 最初の初期値を変えることで, 10試行して検討することとした. なお吸着による停止継続時間は, 今回は考えない. なお, 水分子が, 形成から脱出するまでにかかる平均的な時間の解析的検討も行った. 本研究の結果, 水分子1個が地下空洞内に留まる時間は, 奥行 0.5kmの場合に約7秒, 奥行10kmの場合に約420秒であることが分かった. このことは言い換えると, 月面が夜になった段階で, 水分子は堆積せずに瞬時に縦孔から脱出してしまうことを意味している. しかし一方, 地下空洞の壁面および床では吸着反応が存在し, 水分子のチューブ内での滞在を長期化させる可能性がある. 1 回の飛行後の水分子の平均吸着時間が, 奥行0.5kmの場合約40000秒, 奥行 10kmの場合約1400秒であれば水分子は空洞内に堆積していくことが本研究により予想される. また, 地下空洞は, 実際には 3次元であるため水分子の滞在時間は, 今回の結果より長引くはずである. したがってより短い時間の平均吸着時間でも, 水分子は堆積していく可能性がある.
In this report, we investigate thermal flight behavior of water molecule in lunar caverns. We trace the repeat of flight, stop and re-flight inside in a cavern model of a water molecule that is generated at the bottom of skylight hole opening over the cavern. The assumed temperature is -20 C that is expected in the possible cavern extending from the bottom of the Mare Tranquillitatis Hole (at 8.3N, 33.2E), one of the largest skylight holes on the Moon. As a preliminary investigation, we execute 10 times simulation runs for thermal flight behavior of a water molecule in a simplified two dimensional space that is a rectangle box, each sides are corresponding to a ceiling, a floor in parallel to the ceiling and two perpendicular back side walls. The box has an opening at a central part of the ceiling as the bottom part of vertical skylight hole which is the exit of water molecules to the outside. As a result of runs, we found that water molecules averagely escape from the cavern space in 7 sec for the case of 0.5 km semi-length cavern and 420 sec for that of 10km semi-length one. This result means some amount of water molecules may be left, if the duration times of residence by adsorption at ceiling, floor, and back-side walls exceed 40000 sec at each stop for 0.5 km semi-length caver and 1400 sec for 10km semi-length one. In addition, we note that the residence time of water molecules in the caverns becomes longer and deposition of water molecules probably proceed when we simulate in more realistic cases with a three dimensional cavern.
形態: カラー図版あり
Physical characteristics: Original contains color illustrations
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https://repository.exst.jaxa.jp/dspace/bitstream/a-is/610933/1/AA1630051000.pdf

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