学位論文 VR/MR技術を用いた歴史観光のIT活用に関する研究

佐藤, 啓宏  ,  サトウ, ヨシヒロ  ,  Sato, Yoshihiro

pp.1 - 132 , 2016-06-24 , The University of Electro-Communications
内容記述
観光の新しい形が求められている.わが国の経済を支える大きな産業の一つとして,観光業に大きな期待が集まっている.観光地の魅力を高めるために,観光資源を抱える各地の自治体では様々な模索を続けており,観光のIT 活用はその目玉となっている.インターネットを利用した観光案内は広く普及し,すでに多くの旅行者が使用する社会インフラとなっている.差別化のために新しい技術が積極的に試まれており,バーチャルリアリティ(VR)やミックストリアリティ(MR)はその一つである.観光の心理学的分析によれば,観光が動機づけ・学習・訪問・感動・再訪のサイクルで成り立つとされている.各段階をIT 活用によって魅力的にしようという提案がなされており,スマートツーリズム構想として知られている.とくに訪問先の現地の魅力をよりよく伝えて感動を深めるための手段が課題となっている.文化財をデジタルデータ化する技術はデジタルアーカイビングと呼ばれ,VR/MR 技術を用いてデジタル化された文化財を鑑賞する試みがなされており,感動深化のために観光への融合が標榜されている.本研究では,VR/MR を使ったデジタルアーカイブの展示の観光応用を試み,実用化へ向けた提案を行う.古代飛鳥京があった奈良県高市郡明日香村において,飛鳥時代を題材にして往時の建物や街並みをCG を用いて仮想復元したVR コンテンツを制作し用意した.遺跡が存在したとされる場所においてVR コンテンツを鑑賞できるように,屋外で使用できる歴史体験端末を開発し実証実験を行った.とくに観光応用における課題の一つが移動にあると見定めて,移動中にVR/MR コンテンツを楽しむことのできる運用を試みた.VR/MR の観光応用は実例が少ないため,大小さまざまな課題が残されている.そこで次の2 つの形式の運用を試みた.・ガイドツアーのサポートツールとしてモバイル型VR/MR 装置を用いる運用・多人数が同時に移動しながら体験できるMR モビリティシステムとしての運用観光イベントとして一般の訪問客から参加者を募り,体験終了後にアンケート調査の協力をお願いし,観光応用の可能性を調査した.その結果,VR/MR の観光応用の有用性と課題を確認できた.VR/MR を観光に導入する大きな目的は観光地の魅力を深めて観光客に現地に足を運んでもらうことであり,歴史観光体験の感動の深化をVR/MR技術で実現するための課題と要件を検討していく.VR/MR の観光応用に関する課題は,運用面における課題および技術面における課題の2 つの側面がある.運用面における課題は,環境を壊さない導入方法,従来のサービスを壊さない導入方法,現地における運用,コミュニケーションの促進,移動の有効活用が重要であると考え,2 つの試行の結果を基に解決方法の検討をおこなった.ガイドツアーのサポートツールとしてモバイル型VR/MR 装置を用いる運用では,特に運用者が現地のボランティアガイドであることに留意して,システムを受け入れてもらいやすいように近いしやすく使いやすいようにすることに配慮した.技術優先とせずに,従来の観光サービスを後押しするようにVR/MR システムを導入することが重要であると考える.技術面での課題は,現時点では特に音による臨場感の向上,VR/MR 特有のコンテンツ編集コストの削減手法が重要であると考えた.MR モビリティシステムを用いた運用において,移動に伴い場面が転換していくようなストーリー仕立ての演出を行うことでエンターテイメント性の向上が期待できる.観光においてエンターテイメント性は重要な要件の一つである.移動中のユーザーの位置・姿勢に伴って,映像とともに音も空間を持った表現にすると臨場感を向上できる.また,映像を360 度任意の方向に眺める自由が与えられている多くのMRシステムのようにユーザーの行動の自由の幅が広すぎると,コンテンツ制作者の意図とは合わずに体験者が視線を送っていない方向で演出されているイベントに気が付かないという問題がある.演出についても,音声により気配を感じさせることによって,ユーザーの視線方向を暗に誘導することができ,その幅を広げることができる.VR/MR のコンテンツ制作は,通常のCG やアニメーションコンテンツの制作と異なり,実際に存在した事物の復元をするためわずかな記録や現存する事物の情報を基にして,最大限史実に近い形で仮想復元する必要がある点に難しさがある.特に日本の古代建造物は多くが木造であり,災害等で失われ現存していないことが多い.しかしながら,礎石や石敷きなど石でできた構造物の一部は残されている史跡が多い.そこで,現存する石敷きの情報を基にして簡単な操作によって自然に石敷きの編集をできる手法を開発した.このようにデジタルアーカイブの情報の欠落部分を容易に自然に復元するための編集手法は今後重要になってくるだろう.
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http://ir.lib.uec.ac.jp/infolib/user_contents/9000000857/9000000857.pdf

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