学位論文 配位子としてピリジンビスニトロキシドを用いた錯体の構造と磁性

川上, 日向子  ,  カワカミ, ヒナコ  ,  Kawakami, Hinako

pp.1 - 87 , 2016-03-25 , The University of Electro-Communications
内容記述
ラジカルはSOMO軌道の不対電子が持つスピンによって磁性を持ち、金属へ配位することが知られている。中心金属に磁性原子を用いた場合の金属?ラジカル間の磁気的な相互作用の研究は分子磁性体、ひいては磁性材料の発展という観点から大きな意義がある。PyBNは有機分子でありながらS=1というスピン数を持つ配位子として期待されたが不安定であり単離には至らなかったとの経緯がある。本研究ではPyBN誘導体の4位に置換機を導入し、立体保護による安定化を試みた。3種類のPyBN誘導体の単離に成功し、 X線構造解析により構造を確定した。 MesPyBNを用いて[RE(hfac)3(H2O)2] (RE=Y, Gd, Tb, Dy, Ho, Er, Tm)を合成した。X線構造解析や磁化率測定の結果からMesPyBNは三座の配位子として機能し、配位後もS=1の三重項状態を維持することがわかった。それぞれのラジカルはピリジンの窒素と金属で平面性の高い5員環を形成し、MesPyBNは金属への配位環境とスピンを制御しやすい配位子であることがわかった。この制御された配位環境によりGd-ラジカル間の相互作用は2J/kB = -15.0(1) Kという大きな値となった。磁気異方性を持つTbに配位した錯体ではラジカル-金属間の相互作用により分子1つで磁石として機能する単分子磁石としての性能が観測され、エネルギー障壁はΔ/kB=26.3(6) Kであった。また、安定ラジカルとして知られている2,6-ジ-t-ブチルフェノキシルについてスイッチング可能な有機磁性材料の応用に向けて検討し、非磁性状態の構造を明らかにした。なお本成果の一部はH. Kawakami et al. Dalton Trans. 2016, 45, 1306.で公表し、当該号の表紙を飾った。

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