学位論文 高分解能レーダのための変復調方式に関する研究

渡邊, 優人  ,  ワタナベ, マサト  ,  Watanabe, Masato

pp.1 - 104 , 2015-12-18 , The University of Electro-Communications
内容記述
マイクロ波やミリ波を用いたレーダは,耐候性に優れる測距・測速センサとして知られている.レーダを近距離センサとして用いることで,これまで困難であった,悪天候下での計測が可能となり,新しい応用分野が開拓されつつある.なかでも,衝突被害軽減や自動運転のための車載レーダ,交差点や踏切等の安全監視レーダは最もミリ波レーダの応用が期待される分野である.車載レーダや安全監視レーダ以外の応用では,老人の見守りシステム,防災時の生体信号捜索,非破壊検査などが挙げられる.これらの各種応用において近距離レーダを用いた認識技術など高機能化に関する研究・開発が進展しつつある.しかし,周波数資源は有限であるにも関わらず,電波センシングや通信分野においてその需要がますます高まりを見せている.すなわちレーダを用いた近距離センサの高機能化において,限られた周波数帯域幅にてレーダとしての基本性能である高分解能が得られる新しいレーダ変復調方式の研究はますますその重要性をましている.本論文は,高分解能レーダのためのレーダ変復調方式に関するものである.レーダ変復調方式とは,目標の距離,速度,角度などを推定するために送信波を変調したのち送信し,得られた受信信号を復調することである.一般に変調方式として振幅,周波数,位相変調が知られているが,レーダでは微弱電力の検知を目的としているため,送信ピーク電力と平均電力差が大きくなる振幅変調ではなく,最大瞬時ピーク電力を送信する周波数や位相変調が用いられることが一般的である.また,送信波の漏れ込みや近距離からの不要波反射との分離を容易にするためにパルス変調されることが多い.さらに,所望の情報,例えば目標の距離を推定するための情報として,送信波との時間遅延差,周波数差,位相差,あるいはその復合情報により分類され,速度検出方法とともに,レーダ変復調方式が構築されることとなる.これらのレーダ変復調方式において,FMCW(Frequency Modulated Continuous Wave)方式は,狭帯域で高距離分解能が得られ,比較的低速の信号処理であることから車載レーダなどにおいて実用化されている.しかし,相対速度のある目標の距離推定時には,Up-Sweep とDown-Sweep の2 つの周波数掃引からなる送信波を用いる必要があり,その受信信号における各ビート周波数のペアリングを必要としており反射点が多数あるときには誤ペアリングによる誤計測が発生しやすいという課題がある.また,ビート周波数という距離・速度の融合計測であるため近距離静止物クラッタがフロア雑音となり検知性能の低下につながることとなる.以上より,耐クラッタ特性を備えるパルス方式に基づく以下に示す2 つのアプローチから,高距離分解能と多目標分離性能に優れる新しいレーダ変復調方式を提案する.①UWB パルスレーダ方式②パルス圧縮方式と合成帯域方式の融合方式具体的には,上記①および②について新しい独自方式を提案する.①PC-HPRF(Phase Code High Pulse Repetition Frequency)方式従来のHPRFUWB パルスレーダにおいて,PRI を短くすると,受信パルスは1PRI 間で信号が目標からレーダまで往復できず,次の送信パルス以降に受信されることとなり,PRI 単位の未知の時間遅延(PRI 遅延)である距離アンビギュイティが発生する.PRI が比較的長くPRI単位の遅延があまり大きくない場合,PRIの異なる複数のパルス列を送受信し,代数的にPRI 遅延を推定するマルチPRI レンジングが知られている.しかし,目標数の制限や,観測時間が増大するという課題がある.また,送信パルス列を位相符号変調することにより観測時間の増加なく距離アンビギュイティを推定する手法が報告されている.これらの方法は,1CPI : Coherent Pulse Interval にわたり送信パルス列との相互相関処理を行うことが必要となるため,計算負荷が非常に大きくなる.このため少ない計算量でPRI遅延を推定し,距離にアンビギュイティのない目標距離が得られることを示す。②多周波ステップLFM(Linear Frequency Modulation)方式,多周波ステップCPC(complementary phase code)方式本融合方式では,合成帯域処理により距離ゲート内の高分解能の距離波形には距離サイドローブが発生する.合成帯域方式において,距離サイドローブ低減のためには,合成帯域処理時に振幅ウェイトを適用する方法が一般に用いられるが,合成後のメインローブ幅が広がるとともに,ウェイトにより信号の損失が発生するという問題が存在する.そこで,損失なしに距離サイドローブを抑圧する手段として送信周波数ステップに不等間隔周波数ステップを適用し,この不等間隔周波数ステップを与える方法について提案する.多周波ステップCPC方式では,多周波ステップLFM方式と同様に符号変調パルス圧縮,パルスドップラフィルタ,合成帯域処理を融合することを考える.一般的な符号変調パルスを用いたパルス圧縮では,符号長が長いほど低い距離サイドローブが得られる.一方,近距離レーダにて長い符号を用いると,近距離クラッタの問題が生じる.これを回避できる比較的短い符号長にて低距離サイドローブが得られるCPC 符号を用い,CPC 符号を用いたパルス圧縮において課題となるドップラーシフトの影響による距離サイドローブ特性の悪化について,位相補正処理による距離サイドローブ特性の改善効果を示し,その有効性を示す.
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http://ir.lib.uec.ac.jp/infolib/user_contents/9000000830/9000000830.pdf

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