Thesis or Dissertation 日本株式市場における非効率性と投資技術に関する研究

加藤, 明  ,  カトウ, アキラ  ,  Kato, Akira

pp.1 - 80 , 2015-09-30 , The University of Electro-Communications
Description
本研究では,日本株式市場における非効率性と投資技術に関する検証を行い,様々な局面で正のパフォーマンスが発揮できる投資技術の提案を目指す.金融工学が前提としてきたセミストロング型の効率的市場仮説の下では,投信運用者が通常行う企業の決算情報等の公開されている情報を用いたファンダメンタルズ分析や過去の価格情報を用いたテクニカル分析では市場平均を上回るパフォーマンスを長期間にわたり維持することはできない.しかし,実際には,ピーターリンチのような「スターファンドマネージャー」が存在し,彼らは市場の非効率性を背景にテクニカル分析やファンダメンタルズ分析を含む様々な投資技術を駆使して,市場を継続的に上回るパフォーマンスを維持してきた.はじめに,本研究では,日本株式市場で運用されるアクティブ型投資信託の運用者の定性的な銘柄選択スキルを検証した.そして,投資信託のパフォーマンスは,PBR(株価純資産倍率)等の主要な投資価値指標によって決定される各インデックスや市場平均であるTOPIX(東証株価指数)に拠る部分が大きく運用者の定性的な銘柄選択スキルが与える影響は全体で考えれば限定的であることを確認した.米国では,投信運用者が継続的に市場を上回るパフォーマンスを達成する背景の一つとして投資家の過小反応・過剰反応に起因するモメンタム・リバーサル現象と呼ばれる株式市場の非効率性を応用した投資技術の存在が指摘されている.本研究では,モメンタム・リバーサル投資戦略の収益性の検証を日本株式市場において行い,米国での先行研究とは異なり短期的なモメンタム戦略の有効性は低く,一方で短期的なリバーサル戦略の収益性が高いことを明らかにした.さらに,ポートフォリオの相対価値をモデル化し,平均回帰速度の観点からどのくらいの期間で株価が平均回帰するのかを確認し,収益性との関係が整合的であることを示した.モメンタム・リバーサル投資戦略は,市場の非効率性に着目した戦略であり,過去の株価情報のみで運用を行える簡便性がある.しかし,投信運用者は,日常的に配当利回りや株価収益率等の投資価値指標を主な投資判断の材料としており,株価情報等のマーケット情報のみを利用することは少ない.本研究では,モメンタム・リバーサル投資戦略に投資価値指標を利用した将来リターンの予測値を合成予測手法によって組み合わせることで収益性がどのように変化するのか検証を行った.また,運用期間を景気拡大,景気後退,景気低迷に分けて運用パフォーマンスを分析し,最終的に,リバーサル戦略にPER(株価収益率)やIFL(東京都区部インフレ率)等特定の投資価値指標を組み合わせることで様々な局面で正のパフォーマンスが発揮できる可能性を指摘した.このような投資技術は,損失回避的傾向の強い個人投資家を含むあらゆる市場参加者にとって有用性が高く,上記のようなテーマを検証することとした.本論文の構成は次の通り,第1章「序論」では,本論文の目的,背景,研究の進め方について述べる.第2章「市場分析」では,投信運用者によって運用されている市場平均を上回るリターンを目指すアクティブ型投資信託の銘柄選択スキル(付加価値)について検証を行う.第3章「市場の非効率性と投資技術」では,投資信託が市場平均を上回るリターンが得られる背景の一つとして米国で指摘されている投資家の過剰反応や過小反応に起因するモメンタム・リバーサル現象と呼ばれる株式市場の非効率性に着目した投資技術を検証する.第4章「投資技術への合成予測手法の適用」では,モメンタム・リバーサル投資戦略やAR1投資戦略と投資価値指標を利用した将来リターンの予測値を組み合わせる合成予測手法を投資技術へ適用する.さらに,景気サイクル毎に運用パフォーマンスを分析し,様々な局面で安定的な正のパフォーマンスが発揮できる合成予測手法を応用した投資技術の提案を目指す.第5章「結論」では,第4章で提案した投資技術が損失回避的傾向の強い個人投資家を含むあらゆる市場参加者にとって有用性が高いことに言及する.
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http://ir.lib.uec.ac.jp/infolib/user_contents/9000000810/9000000810.pdf

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