学位論文 多チャンネル表面筋電図を用いた伝播波解析に関する研究

小菅, 智裕  ,  コスゲ, トモヒロ  ,  Kosuge, Tomohiro

pp.1 - 81 , 2015-03-25 , The University of Electro-Communications
内容記述
身体運動における筋線維の収縮は、神経筋接合部(以下end-plate)での化学的な作用により活動電位が発生し、筋線維に沿って伝播する。このような筋活動による電位変化を計測したものを筋電図として表し、神経筋疾患の診断や筋活動評価等のように、医療分野やリハビリテーション、スポーツ科学分野等で用いられている。 筋電図計測には近年では筋表面に電極を貼付することで非侵襲の測定を行う表面筋電図が用いられ、筋電位の二乗平均平方根(RMS)や周波数、2チャンネル間の表面筋電図の電位伝播の速度等を導出し調べることで、筋疲労評価や活動運動単位解析等が行われている。これら従来の表面筋電図解析では、種々の手法により一解析区間につき単一の速度値や電位振幅、周波数の値を導出し解析が行われている。しかし表面筋電図を用いて測定を行う場合、単一の運動単位における活動電位ではなく複数の運動単位による干渉電位として筋外部から測定される。そのため発生要因や伝播状態の異なる電位伝播が複数混在すると考えられ、単一の値を導出して電位の伝播を調べることには問題があり、またこれらを個々に調べることが出来れば従来以上に詳細な筋電図評価が可能になると考える。 そこで多チャンネル表面筋電図計測時に複数チャンネルに渡り伝播するように発生する電位波形形状(伝播波)に着目し、表面筋電図内に存在する伝播波すべてを抽出し、個々の特徴や構成、変動を調べることが出来れば、筋活動評価や筋収縮メカニズムを明らかにするための新たな指標になりうると考えた。本研究では上記の考えに基づき、筋収縮メカニズムの解明やリハビリテーション等への応用を目指し、多チャンネル表面筋電図の伝播波解析手法の提案と有用性の検討、またこの手法を用いて各種筋収縮時の状態の変化による多チャンネル表面筋電図変化を解析することを目的とする。本論文では全8章により構成され、上記手法の提案と、これを用いて種々の筋活動時の多チャンネル表面筋電図解析を行うことで本手法の有用性の検討と筋収縮メカニズムの考察を行った。第1章では序論として過去の表面筋電図解析手法の例と問題点を挙げ、新手法提案の必要性を記述した。第2章では筋収縮の原理と筋電図について概説した。第3章にて手法提案と、従来手法との比較を行うことで当手法の特徴、利点について検討した。多チャンネル表面筋電図からゼロクロス区間を解析単位とし、再サンプリングと伝播条件設定による定量的な伝播波判定を行う手法(m-ch法)を提案し、個々の伝播波の抽出を可能とし、また波毎の振幅、伝播速度等の観察、複数チャンネルに渡る伝播の観察を可能とした。従来単一の速度値等により解析された点、解析区間や条件設定により大きく値が異なる点に対し、複数伝播波の群として、また個々の波の伝播速度等の値を別々に観察することで詳細な筋電図解析を可能とすることを示した。また取得チャンネル位置も個々の伝播波により異なるため、計測位置の調整の簡易化や、end-plate位置推定への応用可能性を示した。第4章および第5章にて静的な筋収縮である等尺性収縮を行った際の多チャンネル表面筋電図の経時的変化と負荷量による変化についてm-ch法により解析を行い、取得伝播波の構成分布が各種条件での筋活動により変化することから、筋収縮変化の解析に利用できる可能性、特に伝播速度値に着目することで活動筋線維の推定や変化観察への可能性を示した。第6章では、動的な筋収縮である等張性収縮時の表面筋電図についてm-ch法による解析を行った。伝播波の取得チャンネル位置が変化することから、動的運動による計測位置と筋活動位置の変化にも対応できることを示し、また関節角度変化により伝播波構成や発生頻度が変化することが見られたことから、等張性収縮時の筋活動評価へも利用できる可能性を示した。第7章では長期間等張性収縮運動による筋力トレーニングを行った際の表面筋電図を取得し、継続日数による変化をm-ch法より解析することで、トレーニング効果の数的評価への利用可能性について検討した。結果、取得伝播波構成の変化から、運動に使用する筋線維種類がトレーニングにより特定化されるような筋活動様子の変化を確認出来、トレーニング効果の評価可能性を示した。最後に第8章にて本研究の結果を整理し、研究成果についてあらためて言及する。さらに今後の研究の展望について述べた。本研究では伝播波に着目した多チャンネル表面筋電図の解析手法を新たに提案することで、筋表面からの詳細な筋活動解析を実現した。伝播波構成の変化を見ることで、筋活動評価や筋収縮メカニズム解析等、スポーツ科学や医療分野の研究に今後利用できると考えられる。今後の課題としては、未知な点が多い筋活動と表面筋電図変化の関連について、各種運動条件等による変化を更に詳しくm-ch法を用いて解析することで筋収縮メカニズムの追及することが挙げられる。
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http://ir.lib.uec.ac.jp/infolib/user_contents/9000000783/9000000783.pdf

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