Thesis or Dissertation オンラインモニタリングデータを用いた信頼性寿命評価に関する研究

熊崎, 千晴  ,  クマザキ, チハル  ,  Kumazaki, Chiharu

pp.1 - 111 , 2015-03-25 , The University of Electro-Communications
Description
製品の開発段階において,顧客・社会より求められる信頼性を確保する為に現場では様々な市場データ解析,信頼性試験が行われる.製品に求められる信頼性(開発目標値)は市場ニーズなどを反映して定められ,開発者はこれを満足するように設計し,信頼性試験によってその達成を評価する.この信頼性を造り込む設計プロセスの中において,市場調査は顧客や社会のニーズへの適合の妥当性確認(Validation)を行う作業であり,これは正しく行わなければ想定外の市場トラブルに繋がりうる.また実験評価段階における信頼性試験は製品の持つ信頼性・寿命特性を検証(Verification)する作業であり,これが適切に行われなければ,やはり市場での故障は未然防止できない.開発段階でこれらを適切に推進することが,製品の寿命を造り込む上で重要なファクターとなる.本稿ではこの2つの評価プロセスを実際の信頼性データ解析を通して実施し,その際に考慮すべき幾つかの着眼点について提案と検証を行った.一つの着眼点は,〔ストレス-故障メカニズム-故障モード〕の三本柱に基づいた寿命評価である.製品の寿命特性を推定する際には故障の形態と故障の原理原則を正しく捉えたモデル化が重要であり,故障に至る背景の使用・環境条件(製品に加わるストレス)の影響を明確にする必要がある.もう一つの着眼点は,故障モデルへのインプットとなる使用・環境条件が実市場でどの程度の範囲を持っ てばらつくのか確認することである.そしてその為に,製品稼働状態を監視したオンラインモニタリングによる市場データが有用であることを提案し,検証した.はじめに取り上げた製品事例は,光ディスクの信頼性試験のデータ解析事例である.本事例では開発時の実験評価段階における信頼性試験を通して,製品の信頼性・寿命特性を検証する.はじめに第2章では,正しい寿命評価の為に三本柱を明確にし,これに基づいた寿命モデルを立案した.従来の寿命予測ではこのような観点は無く,精度に関する議論も無かったが,本稿では最尤法と最小二乗法を用いて区間推定も含めた予測方法を提案した.第3章では,新たに立てた寿命モデルに基づき,従来行われていた加速試験の妥当性を検証した.加速試験におけるストレス範囲は慣習的・経験的な設計に頼っている事例が多く,本事例も理論的な裏付けは無い.そこで,寿命モデルに基づいた試験条件の最適化手法を提案した.導出モデルには尤度関数を用いており,数値解析によって打切りも考慮した実用的な試験計画が立案された.得られた試験条件はシンプルな方策となっており,現場への応用も容易である.これにより寿命特性の検証をさらに適切に為し得る.続いて取り上げた事例は,トラックの信頼性データ解析事例である.これはオンラインモニタリングが実際に行われた事例であり,得られた市場情報から使用・環境条件の範囲の妥当性確認と,市場データに基づく寿命特性の検証にそれぞれ繋がる.第4章では,実際のオンラインモニタリングデータを分析し,商用車の使用・環境条件を定量的に評価するアプローチを提案した.規模の大きいオンラインモニタリングデータは扱いが難しいが,本稿では既存の多変量解析法を活用し市場全体の特徴を2~3つの視点から容易に把握しうることを示した.この解析を通して,従来は開発者の経験や勘で決められていた使用・環境条件を,定量的かつばらつきをもって評価しうる.そして第5章では,駆動系部品であるギヤの寿命特性を検証した.三本柱を明確にして寿命モデルを立案し,前章で特性値化された使用・環境条件のデータから寿命を予測した.ここでは簡便で汎用性が高い線形回帰モデルを利用した.そして三本柱の着眼 点に基づいて適切な共変量を選択することで,精度の高い寿命予測を為し得た.また使用・環境条件のばらつきに応じて製品群全体への層別寿命予測を実施した.本事例のように使用・環境条件の市場でのばらつきが大きい場合,市場全体を一律に捉えた予測式では精度が極端に落ちる.そこで市場を幾つかの“使われ方”のグループに分類し,ある程度モデルの汎用性を保ったままで精度の良い寿命推定を為し得た.この解析は実験評価段階の信頼性データではなく,アフターマーケットの市場データである.すなわちオンラインモニタリングによって実市場を信頼性試験の場と捉え,そこから得られた信頼性データにより寿命特性を検証した事例である.本稿で扱った2つの製品事例はそれぞれ,市場の実稼働データ・実験室段階の試験データであるが,どちらもこれから行う製品設計開発に対して目標寿命を提案する為のデータ解析のアプローチを示している.本稿で行った諸解析によって,VerificationとValidationのどちらに於いても使用・環境条件を定量的に捉える必要性を述べ,そしてその為にオンラインモニタリングデータが活用されることを最後にまとめた.
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