Thesis or Dissertation イノシトールリン酸による細胞内Ca2+濃度の制御に関する研究

津田, 拓也  ,  ツダ, タクヤ

pp.1 - 106 , 2015-03-25 , The University of Electro-Communications
Description
【背景・目的】細胞質Ca2+濃度([Ca2+]cyt)の増加は様々な細胞機能を調節する。[Ca2+]cyt増加には細胞外からのCa2+流入と細胞内Ca2+ストアからのCa2+放出の二通りの経路があり、後者はイノシトール三リン酸(IP3)によって誘発される。従来、IP3による[Ca2+]cyt制御に関する実験には、光開裂性保護基を持ったケージド化合物が広く用いられている。しかしこの方法では、紫外光を用いる点から細胞毒性が懸念されるうえ、変化の一過性、細胞内安定性といった問題もある。本研究は、IP3産生酵素に可視光応答性を持たせたキメラタンパク質を開発し、[Ca2+]cytを制御するオプトジェネティクスの新規手法を実現することを目的とした。また開発の過程で、未解明の点が残るIP3産生酵素の構造機能相関について、分子内ドメイン間相互作用の観点から解析を行った。【方法】 IP3産生酵素ホスホリパーゼC(PLC)群からPLCζを選出し、マウス卵細胞内で (1) マウス由来PLCζ(mPLCζ)とヒト由来PLCζ(hPLCζ)のCa2+振動誘発活性の比較、(2) PLCζを二つに分割した変異体を作製、単独発現時および対となる変異体との共発現時のCa2+振動誘発活性の評価、(3) 光応答性タンパク質モジュール“LOVドメイン”をPLCζ分子内に挿入した変異体を作製、その酵素活性の光制御の可否の検証、以上の実験を行った。【結果・考察】(1) hPLCζがmPLCζより高いCa2+振動誘発活性を持つことを確認した。PLCζ発現量による誘起Ca2+振動の波形はいずれも同様の変化を呈したことから、両者とも細胞内での反応機構は同じであり、単にIP3産生活性の強さが異なっているものと考えられる。(2) 適切な点で二つに分割したhPLCζは、共発現させると酵素活性が回復することが確認された。また、hPLCζの核移行能を初めて確認し、核移行シグナル配列がXYリンカー領域にあることを突き止めた。さらに、XYリンカー領域内の323-345番目のアミノ酸が、hPLCζ酵素活性に寄与していることが示唆された。これらはともに、豊富に存在するリシン残基の正電荷によるものだと考えられる。一方、hPLCζ分子内相互作用としては、XとY、EFとC2、C2とYの各ドメイン間の相互作用が、活性型コンフォメーションへの寄与が大きいことが示唆された。(3) 作製したLOVドメイン挿入型hPLCζ変異体は、卵細胞内での光応答性が確認されなかった。光応答性を確認する実験条件、LOVドメインの挿入箇所や形式の変更、および使用する光応答性モジュールの変更などの検討が今後必要である。

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