学位論文 仮想物理世界で歩く論理回路の実現

神澤, 俊  ,  カンザワ, シュン

pp.1 - 52 , 2015-03-25 , The University of Electro-Communications
内容記述
本研究では人工生命や分子ロボットのシミュレーションに役立つことを期待して,仮想世界の中で物理的に動作する論理回路を実装し,これを用いて足を動かして歩く回路を実現した.既存の人工生命の研究ではコンピュータ上に人工の環境を構築し,その中で生命モデルを動作させる手法が取られている.環境を複雑に定義することでライフゲームのような単純なルールの支配するシミュレーションでは実現できないような実験が可能になるが,生命モデルの人工知能(AI)は人工環境外に存在するプログラムであるため,あらかじめ定義された以上の動作を示すことは少ない.AIそのものを人工環境内で実装すれば環境の影響を受けて予想外の動作が生まれる可能性がある.一方で分子ロボティクスという学術領域が存在する.分子によってプログラムを可能にすることで望みの動作をするロボットを作り上げようという試みであり,その中でDNAを用いて論理回路を設計しコンピュータを作る研究が行われている.従来のコンピュータが不得意とする分野で応用が期待されている.コンピュータ上でDNAの挙動をシミュレーションして分子反応の様子を解析することで研究が発展すると考えられる.本研究では人工生命や分子ロボットの構成要素となる論理回路を仮想物理世界で動作させ,組み合わせて自由に動き回る回路の実現を目指す.将来的に回路を大規模化してAIを搭載した人工生命を実現したり,論理回路を基に分子モデルを作って置き換えることで分子ロボットのシミュレーションをすることが可能になると考えられる.既存研究で実装されたNANDゲートには「構造上実現できない回路が存在する」「空間に固定されていて動かせない」などの問題があった.本研究では既存のNANDゲートの構造と動作を改良してこれらの問題を解決した.改良したNANDゲートと改良前のNANDゲートでそれぞれ半加算器を動作させて比較した結果,回路の動作速度が向上していることも確認した.また改良したNANDゲートと足パーツを使って歩く回路を実現した.今後はこのNANDゲートをセンサーとしても活用し,1種類のパーツで「センサー」「アクチュエータ」「コンピュータ」「構造」といったロボットの構成要素を全て実現することを目指す.大規模化できればAIそのものも人工環境内で動かすことが可能になる.

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